ゴトウ

ミツバチのささやきのゴトウのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
3.0
死の匂いが充満する映画で暗い気分になった。映画の時代設定的はスペイン内戦後で、戦争の傷を引きずっている社会の雰囲気も描かれているとのこと。評価が定まりきってる系なのでどうしても構えてしまったが、淡々とした時間が流れるうちに正直集中しきれなくなってしまった。しかし子役の二人、特にアナの怖いくらいの美しさで画が保っているようなところもあり。わかりやすい起承転結みたいなものよりもショットの美しさとかを楽しむ方が良いのかもしれない。

外から差すオレンジの光と格子の窓、アナの家(あるいは小さな村)はミツバチの巣で、侵入してくる者は排除されてしまうし、逆にアナは出て行くことができずに連れ戻されてしまう。外から入ってくる情報としての映画に引き込まれるアナは、そこで描かれる死(あるいはそれを象徴するフランケンシュタイン)に強烈に惹かれていく。幼児が死の概念を咀嚼する上で、イザベルがやったような死んだふりとか猫の首を絞めるとかもあるのかもしれない。アナはそれに対して動揺しているようにも見えたけれど、数時間後に銃撃戦で死ぬようなお尋ね者と接している方がずっと危ないのではという気もする。結局「毒かわからないキノコには触らない」などという伝え方は子どもには理解されず、危ないものに惹かれてしまう。線路の近くで遊ぶとか、井戸を覗き込むとか、不安になるシーンばかり散りばめられている。窓の外に「もうあの人はいない」と言い始めたり、キャンキャン犬が吠えていたりして、本当に何かがいるのか?という匂わせもあって不気味。

いろいろ参照元や前提知識を持っていれば感銘を受けられるのだろうか。どの辺りが突出した魅力で「必見」とオススメされているのか、わからないのが悔しい。
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