グラッデン

ミツバチのささやきのグラッデンのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.5
2024年2月に最新作『瞳をとじて』の日本公開を記念して特別上映されたビクトル・エリセ監督の1973年の作品。

物語は、映画『フランケンシュタイン』に魅入られた6歳の少女・アナの日常と、彼女の眼差しを中心に描かれる。物語の舞台は1940年代のスペインは国内内戦後の独裁政権に移行する時期であり、1940年生まれの監督自身の幼少期とも一致する。

彼女が暮らす小さな村にも押し寄せる社会全体の重苦しい閉塞感と、目に見えないものを見ようとすら少女の純粋な眼差しとその目に映る光は対照的に感じられた。

最新作『瞳をとじて』も【映画】と【眼差し】を巡る物語であった。その意味では、本作が単なる特別上映ではないことを理解する。エリセ監督の原点も、自身の経験をベースにした「映画の映画」であることを知ることができて良かった。

また、『瞳をとじて』にコメントを寄せてちた濱口竜介監督の最新作『悪は存在しない』を鑑賞したのだが、同作品に登場する少女の存在とその眼差しはアナを彷彿とさせる。演出面においてゴダールの要素を大きく取り上げられるが、少女の描き方はどこか浮いているように見えただけに、私見ながら回答を導けたようにも感じた。

個人的に不連続の連続性を感じる鑑賞であるが、濱口監督が述べられていた「古い映画を出来るだけ見て、そこから考える」という流れを実践できたと思う。これがあるから、映画を見ることはやめられない。