金宮さん

ナイト・オン・ザ・プラネットの金宮さんのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

超ハイクオリティ会話劇のオムニバスムービー。4,5本しか観てないと思うけど、ジム・ジャームッシュの中ではいちばん好きでした。品質は担保するので、面白いところは自分で見つけてねって感じが最高です。

ほぼタクシーの中で完結するのでなんでもない日常雰囲気系に見えるんですが、会話の内容とかシチュエーションはドラマチックでエキセントリック。後の『パターソン』には「表現者にエキセントリックはいらない。日常こそドラマチック」というメッセージを読み取ったんですが、今作はそのフリといった感じ。作家性が強い監督だと、作品の連続性が楽しめていいですよね。

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ロサンゼルス
粗野でタバコ吸いすぎなドライバーを映画キャスティングディレクターがスカウトする。運転手ウィノナ・ライダーの魅力がその設定に説得力を与える。最後あんな断り方されたら逆効果でより諦めきれなくなる。自分だったらタクシー会社に凸してでも説得すると思います。


ニューヨーク
とにかくヨーヨーがいい奴すぎる。優しすぎて笑っちゃうというニュージャンル。「東ドイツ」というワードを聞いたときの表情にヘルムートへのおもんばかりを感じ、ちょっぴり泣きそうになった。


パリ
目が見えなきゃ肌の色とか国なんて関係ねえ。 5本の中ではわかりやすく社会派ですね。盲目の女性がやたらセクシーで勝気なのがいいです。おかげで丁々発止な会話が弾みます。やっぱり台詞センスは抜群。"出身国を当ててみろ"という運転手に対しての"当てたらカラーテレビでも貰えんのかよ?"という切り返しはシビレました。盲目の毒舌は濱田祐太郎さんに通じる。


ローマ
我らがロベルト・ベニーニのマシンガントーク猥談vs神父様の顔芸。カボチャと羊と義姉がループするエロトークなんて聞いてたらあんな顔にもなるわい。死ぬほど下品な話という不謹慎。こんな奴が『ライフ・イズ・ビューティフル』などとのたまう面白みのフリとなってます。


ヘルシンキ
鬼越トマホークくらいの頻度で喧嘩を繰り返す酔っ払い乗客を、とんでもない不幸話と話術でだまらせる運転手。そもそも友人に起こった不幸を肴にしたヤケ酒だったんですが、運転手のガチ悲劇にどうでもよくなる様は少し笑ってしまう。松本人志も認めるであろう、笑っていいのかわからない状況が生む緊張と緩和。

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・それぞれの街になんとなく持っているイメージが設定に反映されているので、とても記憶に残りやすい。フィンランドについては、最近カウリスマキを数本観たので「アル中の国なのか?」というあらぬ誤解が発生している。あと全体的に禁煙中は観ない方が良い。
金宮さん

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