NAO141

X-MEN:ファースト・ジェネレーションのNAO141のレビュー・感想・評価

4.0
シリーズ内ではなかなかの傑作!
『X-MEN』という作品(原作)は、突然変異して特殊能力を身につけた“ミュータント”のヒーローとヴィランの闘いが描かれているわけだが、社会的少数派(マイノリティ)の苦難を丁寧に描いていることも大きな特徴である。普通とは違うということでの孤独、疎外感、苦悩。それがやがて社会的多数派との軋轢、対立を生み出すことにもなっていく。人類とミュータントの平和的共存を願うプロフェッサーX(チャールズ)とミュータント至上主義で人類と敵対するマグニート(エリック)、何故チャールズとエリックは袂を分かつことになったのか、本作ではその点も丁寧に描いているのが見所。

『X-MEN』という映画作品は、まず2000年から2006年にかけて三部作が公開されている。そして本作『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』だが、シリーズにおける〈前日譚〉の位置付けにもありながら、同時にこれまでの設定をリセットした〈リブート(やり直し)〉作ともなっているのである。そのため『X-MEN』シリーズを全く知らないという方でも楽しめる上、本作で原点を知った上で後追いでこれまでの作品を観る楽しみ方もあるかと。本作はチャールズとエリックによって多数派との向き合い方を、そしてレイヴンとハンクによって普通とは違う自分たちの肯否を、見事なバランス感覚のもとに描き出している。

エリックが掲げるミュータントこそ優れた人類だと言う思想は、かつて自分自身を苦しめたナチスが掲げていたアーリア至上主義と結局は同じだということも皮肉に感じられる。物語序盤から〈コイン〉が象徴的アイテムとして使われているが、このコインはエリックの怒りを具現化したものであると同時に、コインに“表と裏”が存在することが彼の運命が“どちらに転ぶかわからない”ことを暗示しているようにも感じられる。

ケヴィン・ベーコンがなかなか魅力的なヴィラン(ショウ)を演じている。様々なミュータントが登場するが、口から高振動波を発して飛行するバンシーはちょっとなぁ苦笑。あの形でないと空を飛べないのは嫌だな…笑。

エリックがレイヴンに言う
「社会に受け入れてほしいくせに、キミが自分自身を受け入れていない」
という台詞がとても印象的。
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