金宮さん

「A」の金宮さんのレビュー・感想・評価

「A」(1998年製作の映画)
3.5
フラットな描写への配慮はとてつもなく感じるが、やはりドキュメンタリーから恣意性を完全に排除するのは難しい。

今作最大のバリューは「オウム信者の人間味を顕在化する」ことなのは間違いなく。変な話、メディアのイメージそのままであれば作品化する必要がないので、スタートから若干オウムフレンドリーに見える構造の罠がある。

繰り返しだが監督自身は偏向を避けるケアを充分すぎるほどやってる。ラスト近辺で、(作中登場するほぼ野次馬のお説教と対比するように)あくまで冷静にオウム側の問題点やとるべき行動について直接言及する。そこにバランスへの強い意識が表れてる。

オウムフレンドリーへの傾きは、どちらかというと観る側の問題。「あのカルト教団も信者のほとんどは普通の人たちだった」を求めて鑑賞している要素は否定できない。そんな中で、監督は作品に誠実がゆえに容赦なく権力側のダメさも描いてくる。このあたりから自分に注意喚起した。意識として信者の肩をもって大丈夫か?それを社会で発言する危険性はとっても高いぞ。麻原ニュースを冷静に見られてる彼らだ、辞める選択肢も持てたはずだよ。そもそも彼ら彼女らの生活費はどっから出てるのだろうか?

結果、作品の印象として「危なさ」がいちばん強いものになってしまった。

映像資料としては唯一無二だし、そもそも撮影許可の信頼を得るジャーナリストとしての凄腕を感じる。ただ「ゆきゆきて神軍」でも感じたが、ドキュメンタリーが上質&センセーショナルであればあるほどリテラシーをしっかり持たなきゃ!と自分のほっぺたをひっぱたく。
金宮さん

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