森田芳光監督の中では間違いなく当たり枠。でも、期待値が高すぎたのはあったかも。
愛憎や不倫がにょきにょき出てくるプロットに「あ、これラストで関係者大集合しちゃう?」「怪演対決やっちゃう?」とずーっとわくわくしたのだが、ぬるっと終わった感じ。
前者は今泉力哉監督づけな自分のせいなんです。でも、後者に関しては『刑法39条』『黒い家』『それから』『家族ゲーム』で邦画史上最高レベルの演技合戦をやってのけたんだから。しかも、今回はこんだけのキャストを揃えたんだから期待してもいいじゃない、といった感じ。
とはいえ全体的に漂う軽薄さに監督の作家性が機能しており、不倫が悲観的トピックとしてあまり粒だっていない。ニヤニヤしながら豪華すぎる日常系を楽しむことができる。
また、キャラ造形をナチュラルに伝えるのも流石の演出で、中村獅童さんが漬物をポリっと鳴らしただけで耳目を集めるところなんかは実家の閉塞感を端的に表していてて技あり。
演出アプローチの選択肢を数多持っているのはフィルモグラフィが実証済。随所にはさまる説明過多や古臭い台詞まわしは、昭和感のためのあえてだったと想像され監督の器用さも感じとれました。
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今回、森田作品における怪演枠として白羽の矢が立ったのは間違いなく中村獅童さん。登場シーンから明らかに変な人で観客を引きつけます。でも実は、最終的に親戚一同のなかでもいちばん頼もしい人。確かにあんな粘着質な興信所調査員が相手になるのは最悪だ、味方に欲しい。
映画デビューまもない『ピンポン』と『アイデン&ティティ』の間での今作。いきなり飛ばしまくってます。