櫻イミト

チャンプの櫻イミトのレビュー・感想・評価

チャンプ(1931年製作の映画)
3.0
「群衆」(1928)「ステラ・ダラス」(1937)のキング・ウイダー監督によるトーキー初期作。アカデミー賞主演男優賞(ウォーレス・ビアリー)と脚本賞受賞。1979年に同題でリメイクされた、父と息子&ボクシング映画。

元ボクシング・チャンピオンの父は酒に溺れギャンブル三昧。だが幼い息子は父が大好きでチャンプと呼んで慕っている。それがある日、離婚した母親が現れて息子を引き取りたいと申し出る。。。

「ステラ・ダラス」は母と娘、本作は父と息子のメロドラマだった。「人生の乞食」(1928)で人情に熱いホーボーの親分を演じたウォーレス・ビアリーが不器用だが子煩悩の父親を好演。息子役も、大好きな父親を甲斐甲斐しく世話する様子を微笑ましく演じていた。

映像・演出ともに1931年制作とは思えないほど垢抜けていて終盤まで楽しんで観ていた。しかしラストカットが衝撃的なほど好みではなかった。退室するのはおかしいと思う。海外サイトを見ると苦言を呈する向きは見当たらないので自分の感受性の問題なのかもしれない。個人的には、ラストカットがせめて息子のアップで終わっていれば、本作も「ステラ・ダラス」のように名作として語り継がれたのではないかと思う。

息子の対等な親友としての黒人少年の存在が目立っていた。1931年当時の珍しい描写として記憶しておきたい。
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