戒厳令解除まもない台湾。行き場のない若者たちの衝動を立体的に写実する。
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片方の主人公はアザー。行き場のない情熱を夜遊びにぶつけ、男2女1黄金比率のトリオで行動してる。彼らを待つのはよくない結末だよなあって感じだが、案の定。
もう1人の主要人物は陰キャのシャオカン。押しつけっぽい教育、スピっぽい母親&封建的な父親などにより、気持ちが晴れない。そして作中では友人も登場しない。
最大の特徴はシャオカンの鬱屈がアザーへの攻撃で発露されること。今作も台湾ニューシネマにカテゴライズされると思うが、そういった作品の場合ってアザー達にフォーカスすることがほとんど(アメリカンニューシネマも含め)。名作「鈴木先生」の言葉を借りれば「手のかからない子」はフィーチャーしない。
ヤンキーも予備校生も平等にその閉塞感を表現していて、とても誠実に感じる。どちらかだけはよくある。双方のキャラが関わりながらも同時にっていうのが珍しく、写実性がより立体になっている。
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・主要キャストは次作の愛情萬歳でも続投。なんならシャオカンに関しては役名も同じ。2作品のストーリーを地続きとしてみても違和感はまったくない。
・シャオカンの行動原理として真っ先に思い浮かぶワードは「ルサンチマン」。なんとなくナード的な人物の嫉妬的感情という印象だったが、気になって調べてみると「弱者の強者に対する、怨恨や復讐感情」と出てきた。となると、アザーとシャオカンに強弱の関係があるのか?と一考の余地はありそう。そして巷で流れてくる「ルサンチマン」は誤用が多そうという勉強になった。
・原題にある「哪吒」は封神演義でもおなじみ。道教、仏教、説話で登場する「子どもの神様」で「反逆の精神を持っていて、絶えず現実に反抗している」と監督自身が語っている記事がありました。