チッコーネ

森の彼方にのチッコーネのレビュー・感想・評価

森の彼方に(1949年製作の映画)
3.5
コスミック出版の冴えたキュレートのお蔭で、ようやくベティの「What A Dump!」を確認できた。
30~40年代のワーナーに女王として君臨、美人女優を押しのけ、新進監督をいびり倒してきた彼女の下降を確認できる作品で、顎や二の腕のだぶつきといった老醜が、すでにその容姿を侵している。
気丈に『街一番の美女/悪女』を演じる姿は当時の観衆に「滑稽」と失笑され、本作を最後にワーナーとの契約は更新されなかった。
しかし翌年にはFOXで代表作『イヴの総て』をモノにした彼女のタフネスに感じ入りつつ、鑑賞。
アメリカ版『ボヴァリー夫人』とでも言いたくなる設定、謀殺も厭わぬサイコパスぶりは徹底したもので、やはりベティ以外に適役は考えにくい。
ポップスの題材にも取り上げられた彼女の大きな瞳を、階上から『邪の象徴』として捉えた撮影には、悪意さえ感じられた(本作でも、監督との仲は険悪だった様子)。
また狂熱に侵され地べたを這いずるラストシーンは、「処罰」以外の余韻を差し挟ませぬ陰惨な迫力に満ちている。

しかし田舎町で浮き上がるほど才気に溢れた女が、自己実現として夢見るのが『高級品で埋め尽くされた、マテリアル・ワールド』とは、何ともお寒い。
そして60年以上の時を経た現代にも同様の女が一定数存在し、SNSで吹けば飛ぶよな投稿を垂れ流す醜態には、諸行無常の響きあり。