彦次郎

シャーロック・ホームズの冒険の彦次郎のレビュー・感想・評価

3.5
名探偵シャーロック・ホームズとワトスン博士が記憶喪失の女性ガブリエルの依頼により夫捜索で共にスコットランドのネス湖を訪れるミステリー。ワトスン博士の死後に銀行から遺稿が見つかるというシャーロック・ホームズのパスティーシュ鉄板の設定からの開始になっています。
元々は4編のエピソードで構成された4時間ほどの大作ということで原作の短編集のようなニュアンスだったのでしょう。原題は『The Private Life of Sherlock Holmes』とあることからもシャーロック・ホームズの私生活を描いたものということでしょうか。そういえば入浴している場面とかありましたし。前半に中年ロシアバレリーナから天才的頭脳の種が欲しいという19世紀らしからぬ直球な求婚話がありましたがこれもその1編だったのかもしれません。
相棒ワトスン博士が下卑た笑顔でバレリーナ達と踊り狂いホームズが結婚回避のため同性愛者ということにされて激怒するという下半身と名誉を重んじてそうなグラナダ版愛好家からすると噴飯しそうなキャラ設定。後半のネス湖編でも口喧しく無能そうな道化師的存在ですが彼がいないと面白味が欠けるのも確かです。ハドスンさんや兄マイクロフト(クリストファー・リーが演じている!)が登場してくれるのは嬉しいところです。
ネス湖と書いてある時点で慧眼な方は展開がお分かりいただけると思いますが一応現実的(当時実現可能だったかはおいても)な解釈解決となっているのでご安心いただきたいところ。むしろ気になったのはホームズが思ったよりも名推理を披露せずマイクロフトのほうが存在感があるところでしょうか。それでも19世紀の英国雰囲気は再現してあるし原作事件への言及など丁寧な作りとなっているのは良かったです。
本編とあまり関係ありませんけどワトスン博士という人物、探偵の助手ながらも後年に自分の作品として依頼者の事情を記して世に広めてしまう(発表できないのもトランクに保管して死後にバラす)ことをしでかしており現在(視聴時2023年)ならばこの人のほうが真っ先に命を狙われてもおかしくない気がします(ホームズの許可は得ているらしいけど)。
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