彦次郎

リアリティのダンスの彦次郎のレビュー・感想・評価

リアリティのダンス(2013年製作の映画)
3.6
アレハンドロ・ホドロフスキー・プルジャンスキー氏の少年時代を描いた自伝風映画。同名の著書もある模様。
このアレハンドロ・ホドロフスキーという監督のことは未知でしたがチリ出身の映画監督、演出家、詩人、俳優、作家、バンド・デシネ作家で『エル・トポ』という作品がカルト的に人気だったりSF大作『デューン』を製作するも中止になったりという色々エピソードがあるようです。
金髪のカツラを被っている少年時代から始まる自伝というには不思議な世界観が展開される話です。話よりもも両親のキャラクターが強烈すぎて印象に残りました。オヤジのハイネはアレハンドロを殴って歯を折って治療に麻酔無を強要する暴力独裁者で今日なら虐待で訴えられそうな人ですが、ペストに罹るも復活したり家族をほったらかして大統領を暗殺しようとしたりチリ各地を放浪したり記憶喪失になったりナチスに拷問にかけられたりする波乱万丈ぶりでむしろコイツが主役では?と思わされました。母親のほうもオペラ風に会話をすすめ全裸で息子に接したりする愛情のベクトルが明らかに尖がっているこれまた不思議な人でした。この夫婦の異常にみえる性交も描かれており現実にはアレハンドロ少年は両親を冷徹に観察していたのではと窺えます。
個人的にはオヤジからもらった靴を貧しい友達にあげた悲しいエピソードが素晴らしかったと思います。
キャストをみるとオヤジ役を長男が演じ、その他2人の息子も出演しています。事情は分かりませんが両親そして自分の映画を撮り息子たちに作品に参加してもらうことでホドロフスキー一家の総括を示そうとしていたのかもしれません。
そういえばナチスが出てくるので故人かと思いきや現在(2023年10月時点)で御年94歳にてご健在とのことでそこにも驚きました。
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