Keisetsu

インターステラーのKeisetsuのレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
4.9
ノーラン作品の例に漏れず、このインターステラー、なかなかに難解。

身構えずに鑑賞すると、「滅亡する世界と愛する家族を救うために宇宙に旅立つヒーロー」を描いたものであることは容易に分かるのだが、僕らはどうも、「すべてを理解してないと楽しめない病気」にかかっているようで、SF設定の複雑さが気になって肝心のストーリーが入ってこない…という事態に陥いってしまう。

しかし、そこを粘って解釈が追いつく、あるいは多少の不明点を飲み込む、といった苦労をし、乗り越えると、この作品の評価は一変するだろう。
これは、エビやカニを食べる時に殻を剥くのと同じで、ノーラン作品にいて毎回要求される労苦だが、それがあるから味わい深くなってるのは間違いない。

この作品の感動ポイントは数多あるけれど、特に胸を打つのは主人公クーパーのスタンスだ。

クーパーの置かれてる状況は、最初から絶望的だ。異常気象と世界的不作によって末期状態の地球で農園を営んでいるのだから、先のない未来を日々目の当たりにし続けなくてはならない。
更には元宇宙飛行士で2人の子どもの父でもあるため、持ち合わせた知識と責任から、より深く絶望は影を落とす。
しかもこの絶望はストーリーの展開とともに深刻さを増し、割とどん底まで落ちる。
にもかかわらず、クーパーは踏ん張る。
状況を受け入れ、その上でできることをする。なかなかの表情で落ち込むし、喚き散らして感情も爆発させるのだけど、必ず前を向き、歩みを止めない。
その姿が本当にかっこいい。

何光年もの距離や時の経過という、もはや一個人の努力では覆せないものと直面しても、クーパーは今における「最善」を目指す。

ダークナイトライジングでも思ったけど、ヒーローがヒーロー足る所以って、能力じゃなくて精神性にあるのだと再確認させられる。
ヒーローは諦めが悪くないとね。

圧倒的映像美とカタルシスはノーランなので完全保証。あとはストーリーの好き好きとなるが、個人的にノーラン作品No1。
SFというジャンルには属するのだろうけど、ヒューマンドラマとして、ヒーローものとして、至高の作品。

「難解」と思わず、「分からない」を傍に置いて鑑賞してみることを薦めたい。
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