金宮さん

グランド・ブダペスト・ホテルの金宮さんのレビュー・感想・評価

4.5
100分で誰もがグスタヴと彼の世界の虜。

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全ての人に大手をふっておすすめできる映画って体感100本に1本くらいなんですが、今作はまさにそれ。

おしゃれな彼女とのデートにもぴったり。映画マニアの友だちにおすすめしてもクサしようがありません。映画館でファミリーで見ても、深夜に配信で1人でみても。バーやカフェで流れててもオシャレですよね。

脱獄、弁護士追っかけっこ、スキーのシーンなんかはセリフも爆発も銃撃もない。でも充分に手に汗握る。画力のみでも充分ひきつけられる。過剰にコミカルな動きなんかは往年のサイレント映画を意識したのかなと。そこに洒脱&スリリングな劇伴と、コスパなんざ完全無視(たとえ数秒のワンカットであっても!)の超絢爛豪華な美術&衣装が加わるのでもう無敵です。

でもまあ、とにもかくにもこの映画はグスタヴの魅力。「彼の故郷は知らないし特に聞かなかった」的なモノローグとともに一瞬みえる憂いな表情に、軽薄なだけじゃない影も感じます。でも当然彼は暗い過去なんて語りませんし、我々もわかりません。それでいいですよね。

終わり方は切なさたっぷりですが、不思議と悲しみどっぷりとはなりません。グスタヴの明るさと実は一本筋の通った強かさがそうしてくれたのかと。

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・ゼロがドアを蹴破ろとして、すーーんってなるシーンは声出して笑っちゃいました。なんか全体的にドヤ感がないんですよね。2通目の遺言状開くとこを「もちろん、全財産はグスタヴに」のナレだけで終わらすとことかも。

・セルジュに会いに行くところで、劇伴と教会音楽がシームレスに混ざる演出は鳥肌もの。とにかくBGMセンスは歴代でもトップかも。

・セルジュ役(マチュー・アマルリック)はダニエルクレイグ007シリーズ2作目の悪役さん。特に洋画だと俳優さん覚えは悪い方なんですが、手塚とおるさんみたいなギョロ目ですぐにわかりました。あとしれっと最後のボンドガール(レア・セドゥ)も出てましたね。
金宮さん

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