syuhei

マッドマックス 怒りのデス・ロードのsyuheiのレビュー・感想・評価

5.0
2015年のジョージ・ミラー監督作品。

荒廃した近未来。V8エンジン搭載の愛車とあてのない旅を続けていた元警官のマックスは水・石油・女を独占支配するイモータン・ジョーの軍勢に捕えられシタデル砦に幽閉される。そんなときジョーの右腕である女大隊長フュリオサが資源を満載したトレーラーを奪い故郷「緑の地」に向けて逃走を企てる…。

前作から30年を経て封切られたシリーズ新作。世界観や主人公の名前は継承されているが新しい物語として構築されている。マックスはメル・ギブソンに代わりトム・ハーディ、フュリオサはシャーリーズ・セロン、イモータン・ジョーは第1作でトーカッター役だったヒュー・キース・バーンが演じる。

フュリオサがシタデル砦を出てすぐにタンクローリーの進路を変更して叛逆、気づいたジョーとその軍勢が輸血袋マックスを連れて追いかけ、いろいろあって戻って来るというだけの非常にシンプルなオデッセイ…なんだけどその密度と熱量が恐るべき水準に高められており、ひとたび見始めたら止まらない。

タンクローリーの追いかけっこが主軸となり数々の超絶アクションや大迫力カースタントがそれを彩る。一方で冒頭の世界観の解説など説明的な部分の語り口は最小限度にとどめられ、そのやり方がとてもスマートだ。特にフュリオサがある場所に辿り着き絶望するシーンはわずか数秒だが強い感動を呼ぶ。

古今東西の優れた芸術がそうであるように本作からも多くのテーマやメッセージを読み取れる。その中の1つは絶望から立ち上がる普遍的な人間讃歌という、描き方を間違えばクサいだけになるものだが、本作はダイナミックなアクションと作り込まれた細部の融合で有無を言わせない説得力で迫ってくる。

シリーズを通じて随所に見られるユーモア要素もしっかり埋め込まれており、音楽隊を載せたドゥーフワゴンは何回観ても面白いし、ジョーにいいところを見せようとしてすぐ失敗するウォーボーイに大笑い、ジョーの仲間の人食い男爵と武器将軍も名前からして笑える。とにかく何から何まで面白い映画だ。

2010年代の最重要映画の1本であることは間違いないので映画的教養という意味でも必見。2024年5月末日に公開される新作スピンオフ『マッドマックス:フュリオサ』は前評判も上々で楽しみで仕方ない。タイトルのとおりフュリオサの若き日々を描く物語になりそうなので本作の事前鑑賞は必須かと思われる。

https://x.com/syuhei/status/1792114853248913857
syuhei

syuhei