金宮さん

リトル・フォレスト 冬・春の金宮さんのレビュー・感想・評価

4.5
丁寧な暮らしの飯テロ映画にとどまらず、名台詞のオンパレードで人生観について考える

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前作の夏/秋に引き続きの飯テロっぷりなんですが、比較的一般家庭でも再現できそうなものが増えていて嬉しい。個人的には砂糖醤油の納豆餅とばっけ味噌は絶対にやろうと決めた。鑑賞後に検索しましたら、ばっけ味噌は大根やセロリの葉でも代用できるみたいですよ。

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人間ドラマパートの増加も変化点。松岡茉優さんファンとしては出番が増えて嬉しいところ。

「カップラーメンとご飯ばっかり」→「ひでぇな」
「怪力ですねえ」→「おい!」

みたくリアクションひとつひとつが飾らない感じなのがとっても好印象。会話も聴いていて心地よいです。

一方で後半から田舎で暮らす閉塞感にも近い要素が顔を出しはじめます。「去る人=いち子母」「残る人=キッコ」をそれぞれの象徴として、ラジカルにキャラ造形してますね。いち子母は突然失踪、キッコは集落内で結婚して子供を産む。(キッコの"私たちで子供たくさん産んで分校復活させるんだ"とかは危なげな台詞)

ただ、作品としてはどちらにも偏っておらずリアルを淡々と伝えているだけだと思います。それこそ作中の人間を螺旋と捉える許しの理論ですよね。

反応としてありがちな「やべー移住してー」みたいなとこへのケアというか、自然の厳しさのみではない「田舎で生活する際の社会的心得」みたいな注意喚起が三浦さんからあったのはバランス感覚に優れた作品だな、と思いました。あんな言い方しなくてもいいけどね。

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「相手の悪いところが目につくのは、自分にその要素があるから」はほんとにその通り。私自身、どこか別のところで見かけて以来、座右の銘にしている言葉です。

そんな私は誰かの悪いところが目についてばっかりです。ああ極悪人なんだなーと自責の念に駆られることもあります。でも「自分にもあるんだから許さなきゃ。たくさん目につくってことは、逆に他人を許せる選択肢が増えたってことだぞ」と割り切って考えられるようにもしたい。相手の悪いところの行動原理まで考えられるようになればなおのこと。この「許しの選択肢を増やす」は映画等たくさんの作品に触れる目的のうちの大きな一つです。作中キャラの嫌な部分に気づきながら、許すための知識と自戒を増やしてます。

聖人じゃないので、なんでも許せるようになるほどなかなか上手くはいかないですが。

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なぜかイジられキャラ的な登場が多い温水さんがとんでもない演技派なんだぞ!というのが今作では味わえますね。
金宮さん

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