すずき

薄氷の殺人のすずきのレビュー・感想・評価

薄氷の殺人(2014年製作の映画)
3.4
1999年、サマーシーズン到来!
バラバラ殺人事件の捜査をしていたジャン刑事。
だが容疑者の男はジャンを拳銃で撃った後に命を落とし、事件の真相は闇の中となる。
しかし2004年の冬、その手口と酷似したバラバラ連続殺人が発生する。
ジャンは刑事課から異動していたが、事件が気になり首を突っ込む事に。
被害者に共通しているのは、99年の事件の被害者の妻ウーに近づいた男性だった事。
ジャンはウーに接近し、彼女に惹かれていく…。

ディアオ・イーナン監督の、中華フィルムノワール作品。
ジョン・ウーやジョニー・トーの得意とする「香港ノワール」とはテイストは異なり、あくまで「フィルムノワール」といった感じ。
冒頭のじっとりする暑さと、本編の真冬の冷たい空気、そしてこれぞザ・中国!と言いたくなるレトロで汚いロケーションを舞台に、殺伐とした事件の謎を追いかけていく。

汚いロケーションに加えて、登場するキャラクターも華のないオッサンばかり。
しかし、この映画のファム・ファタールたるウーだけは、全体の画に不釣り合いなほど美人で、良い意味で違和感が凄い。

台詞は極端に少なく、状況説明めいた台詞はほとんどない。
テンポは早くないが、ギリギリまで必要な描写を削ったような、ある意味タイトな作品。

この映画で1番ビビッと来たのは、冒頭の突如始まる銃撃戦。
何気ない動作から、シームレスに暴力シーンに移行し、呆気に取られてるうちに終わる。
凄惨なシーンなのに、どこか抜けてる雰囲気も独特だった。

あと花火を打ち上げる人物をギリギリ映さないラストシーンも素敵。
邦題の「薄氷の殺人」より原題の「白昼の花火」がピッタリだなあ。そもそもそんなに氷薄くないし。寧ろ厚いし。

ミステリーのストーリー的には普通で、想像の範囲内だし、特筆すべき所は無いかも。
しかし映画全体の雰囲気、作風は結構好みなので、ディアオ監督の別作品も是非見てみたい!