彦次郎

食べられる男の彦次郎のレビュー・感想・評価

食べられる男(2016年製作の映画)
3.4
「地球人被食制度」なる条約で1週間後に宇宙人に食べられることになった工場員の村田よしおがを描いたSFドラマ。
人間は食事をしないと死ぬ存在ですが日頃から食べる対象が何を考えているかとかその成り立ちは考えていないのが常でしょう。食料となる存在が自ら下ごしらえしたり自分の味について考えるなど「食」がテーマと思われます。ホモサピエンスが食糧となるSFとしては藤子・F・不二雄先生の傑作『ミノタウロスの皿』が想起されますが本作は昭和的雰囲気の日本で淡々と被食者として過ごすオッサンを描くというシュールな作品となっています。
個人的には被食者というよりも周囲の人間の無感覚的な冷酷さが印象に残りました。食料認定されたことで人間から食料へと価値が変遷していくことに対する人間の本質を問いているのかもしれません。友人となる木下、親しくなる女の子、金以外に関心もない元妻とメインキャラたちのみならず被捕食者として認定されたことに祝辞を述べる同僚者たちなど宇宙人に食べられるという制度に不干渉な人々(食べられる村田ですら抵抗はしない)というところに日本人の同調性と冷酷さが表現されているように思えました。
賛否ありそうなラストですがあまりリアルにすると更に救いようのない暗い話になるので致し方なかったのでしょう。
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