金宮さん

マンチェスター・バイ・ザ・シーの金宮さんのレビュー・感想・評価

4.0
中盤で判明する主人公の過去に絶望を感じる。気持ちが全く癒えることはないのも仕方がなく、心は閉じたまま。一方、父親を亡くした甥の態度は軽薄に見え、主人公の気持ちとの対比のよう。ただそれは誤解で、悲しみに蓋をしているだけだと後々わかる。

この2人が、お互いそれぞれ傷の拠り所になっていることにゆっくり気づいていくストーリー。でも実は、展開とともに激しくぶつかったり、泣きながら慰め合ったりはしない。物語の最初と最後で距離感はあんまり変わっていない。前述の通り「気づいた」だけ。この丁寧で繊細な心理描写がとにかくリアルかつ見事で、地味といえばそれまでなのだがこっちの方が身に詰まるなあと思った。

また、終盤近く元妻が主人公に気持ちをぶつけるも主人公がそれを受け止めきれない会話のシーン。ここが凄まじい。翻訳が悪いわけではないのだが、字幕ではわからないもっともっと微妙な機微があるはずで、英語ネイティブじゃないのがくやしーってなった。
金宮さん

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