ルーク大佐

THE BATMAN-ザ・バットマンーのルーク大佐のレビュー・感想・評価

4.5
『ダークナイトトリロジー』は3人称視点の伝聞や描き方が多かった。本作は1人称視点で語る「バットマン:0」の物語だ。ストーリーの構造が違う別作品なので、同じ土壌で評価するのは無理があるかも。

2022年公開当時IMAXで見たときの第一印象は、陰キャ新人探偵が悪への復讐心をたぎらせ、暴力もいとわずゴッサムシティを守るために闘うストーリーかと。真相にたどりつくまでは、ダニエル・クレイグ版『007/カジノ・ロワイヤル』のように、若さゆえ感情の爆発を抑えられない。徹底的に敵を叩きのめす。その暴力性は粗削りで、メンタルの闇すら感じる。

暗闇の黒、ナイーブな白と血の赤、そして破壊と創造をもたらすゴールドの4色くらいしか出てこない。陽キャ代表の『007』と違って陽光輝く昼間や美女と戯れる砂浜などとは無縁だ。画面は漆黒の夜と重たい雨。そこかしこで暴力が溢れ、だれが正義かわからない。沈鬱で人々が希望を抱けない社会。

ゴールドが印象的なシーンはバットマンが敵陣へ乗り込んだ際の暗闇の銃撃シーン。大画面で見たとき、背筋がゾクゾクした。〝暴力美〟だ。
もうひとつはラストでバットマンが黄金色に燃えるたいまつを掲げながら人々を助けるシーンである。美しい。

ちなみにリドラーが収容された精神病院では、白と赤の拘束服を着ていた。病院には似つかわしくない色使いだから何らかの意味を込めているのだろう。最後の方で若きJOKERが収容されて高笑いしていたが、、

バットマンが事件が収束を見た際、人を救うのは(暴力や)復讐心ではなく希望だ、的な独白をしていた。その通りだろう。両親を暗殺され、心にトラウマを抱え続けながらも自己の感情を覆い隠してきた彼だからこそ、たどり着いた境地なのだ。メッセージ性、作家性の高い脚本である。

配信などで二度見すると、リドラーやペンギンのキャラなども深く味わえる。初見では、コリン・ファレルがペンギンを演じていたことを知らなかったので、あとあとビックリした。次作が楽しみの傑作だ。
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