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マリアムと犬ども
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『マリアムと犬ども』に投稿された感想・評価

みゅー

みゅーの感想・評価

3.7
WS-6
『皮膚を売った男』の監督の作品。
おすすめ(?)されて早速鑑賞。

21歳の女性が一夜で経験したこと。
9つのシーンをそれぞれワンカットで撮影。

2つ目のシーンが始まった瞬間は頭の中は「?」でいっぱいだけど、それは悪夢のような一夜の始まり。
レイプされた後だというのに、病院や警察の対応はひどいもの。
そしてそこからの真実、その後の対応、全てが彼女をどん底に。

他のレビュー読んでたら、実話に基づくとかいう恐ろしい言葉を見てしまった。
きっとこういうことは日本でも似たようなことはありそうだし、実際にあるんだろうなと想像は容易にできるけど、それでもフィクションであってほしいと思うお話だった。
亘

亘の感想・評価

4.0
【全てを経験した一夜】
マリウマは、大学のパーティでユセフと出会いパーティを抜け出す。しかしその後彼女は警官にレイプされ気が動転したままユセフとともに病院へと向かう。そこから彼女はたらい回しにされ忘れられない一夜を過ごすのであった。

レイプされた女性マリウマの一夜を描いた作品。本作の特筆すべき点は長回しのカット。全編は9章に分かれ各章が1カットで描かれる。1カットでマリウマを追い続けるからこそ彼女が受けるたらい回しを追体験して観客も疲れるし彼女の動揺・不安も感じることができる。監督が伝えたかったであろう女性の地位の弱さや社会の不条理を表現するのに非常に効いていると思う。

[ユセフとの出会い]
本作はマリウマがパーティに向けて楽しそうにメイクや衣装を着替えているシーンから始まる。まさにこれから起こることを何も知らないという様子で、パーティ前から映すというのは今後起こることとの対比を描くということで効果的だと思う。そして彼女は初対面の男性ユセフに惹かれ2人でパーティ会場を出るのだった。

[病院での無関心]
しかしそこから彼女の想定外の一夜が始まる。気が動転したマリウマにユセフが付き添い、病院に行く。しかしIDがないからと突き返される。レイプを立件するには診察が必要だがそもそも診察を受けられないようなのだ。別の病院に行っても状況は同じだし、一度ある医師の診察を受けるがまずは警察に行けと言われる。

ここで翻弄されるのは、一度は医師の診察を受けられそうになること。ひたすら長回しでマリウマの後を追っているからこそ診察が受けられそうだと観客も期待をしてしまう。しかし結局は詳細な診察はできないし、傷の確認として男性医師に院部を見られてしまっても結局は警察に行かないといけなくなるのだ。

[警察署での悪夢]
警察署では更なる悪夢が待っていた。男性警官たちは威圧的に事務的に質問を進め、ユセフとの関係もからかった上で不祥事が露呈しないように立憲を見送ろうとする。しかも詳細に事件の状況を聞こうとするしセカンドレイプの状態。さらにはユセフが逮捕され、彼女を襲ったらしき人物も現れ、警察の中で唯一優しかった女性警官もいなくなりマリウマは孤立無縁になる。

警察署のシーンで怖いのは、徐々に味方がいなくなる一方で警官たちに事件をもみ消されそうにされそうになるところ。どう見ても彼女1人では太刀打ちできないのに警官たちに追い詰められ、さらには彼女への復讐としてさらに暴行されそうになる。警察署内をひたすら逃げるシーンは緊迫感があった。

[失望]
翌朝彼女は警官たちから取引を持ちかけられる。父親への電話もちらつかせられながら彼女に事件を忘れてほしいというのだ。ここからが本作でも最も胸糞なポイントで彼らはここで国への忠誠心を聞くのだ。チュニジアを愛しているなら、この国にずっと住み続けたいなら、国を混乱させることはしないでほしいと依頼してくる。全くもって被害者に寄り添わず自分達のことしか考えていないし、そのエゴのためにマリウマはこの夜ずっと辛い思いをしたのにである。ここでマリウマが語る「全てを経験した」という言葉は、翻弄され続けて疲れたということとこの国の実態を身をもって知ったということなのだろう。ラストシーンは妙に爽やかで一夜を経験した彼女の達観を表しているようだった。

印象に残ったセリフ:「全てを経験した」
印象に残ったシーン:警察署内を逃げ回るシーン。ラストの爽やかな朝のシーン。
2023年4月30日@元町映画館
イスラーム映画祭8にて、日本初公開。チュニジア映画。第70回カンヌ国際映画祭ある視点部門選出作品。2012年に実際に起きた警察官による性暴行事件を元にした作品。

短評は、映画祭で鑑賞後追記します。

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