彦次郎

ファウストの彦次郎のレビュー・感想・評価

ファウスト(1994年製作の映画)
3.6
不思議な地図を手に入れた中年男性ファウストが地図からたどり着いた人形劇場で悪魔と契約するファンタジー。元はゲーテ作の著名な作品(小生は未読)ですが監督が鬼才ヤン・シュヴァンクマイエルとあって独自性がほとばしっています。そもそも時代が現在(1994年頃のチェコ)というところから始まり何者かが操る人形劇、実際の世界に現れる等身大の人形、自分の顔を模した悪魔、人形性交と原作を気にしないスタイル。
無音楽、不味そうな食事シーン(人形がクリームなめたりしている)、CGではないアニメーションという組み合わせでメインとなる登場人物はファウストのみという前作『アリス』にも通じる寂寥感ですが今作はそこから更に救いのない人間の愚かさが加わっていました。
古びた建物も廃墟を含めて、日本でいう『悪魔の手毬唄』の陋屋のような薄気味悪さがあり監督はホラーでないつもりかもしれませんがかなり怖いです。終盤の『笑うセールスマン』のようなオチも強烈。かなり視聴者の好悪が分かれる作品かと存じます。
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