金宮さん

響 -HIBIKI-の金宮さんのレビュー・感想・評価

響 -HIBIKI-(2018年製作の映画)
3.5
響のぶっとんだキャラ設定に霞んでしまいそうですが、実は各登場人物をとっても丁寧に描写しており、一瞬でそれぞれの性格を理解させる凄腕の演出と脚本だと思います。

観る側の読書遍歴に寄るでしょうが、それぞれが「こんな小説書いてそうだな」と想像できる感じが素晴らしい。

個人的なお気に入りは北村有起哉さん演じる鬼島。響にあてた"いつかわかるさ。自分の世界と現実に折り合いがついてしまったこの感覚が"は、まあちょっとダサすぎますが、この台詞のあと「けっ!」みたいな表情仕草を見せます。「小説家的因果で名台詞言っちゃった、恥ずっ」みたいな照れ隠しぽい。人間臭くていいですね。北村さんのアドリブか演出か、いずれにせよこういったケアは冷めずにすむので大好きです。

このとおり、細かな演出は素晴らしいのですが主題がちょっと薄味だったのは事実。天才と周囲の苦悩を描くのならば、才能じゃなく左脳ロジックで勝負するライバル(バクマン主人公ペア的な)とか欲しかったですね。響の対抗要素はマスコミオンリーで、単に響がすごい!で終わっちゃったのが惜しい。文字通りライバル役者は充分すぎるほど揃ってましたしね。


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・小栗さんが自作を書き上げた瞬間に、涙をつーって流すシーンとてもよかったです。作品に本気で向き合っていたら確かにああなりそう。

・リカの作品が乱暴すぎる要約とチープな映像をもってテレビ番組で紹介されるのは、土曜昼間の某情報バラエティの文芸紹介コーナーを揶揄したものかと理解しました。もうその時点で今作は信用できます。
金宮さん

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