"未来の技術者のために"
ファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇氏が著作権法違反ほう助の容疑で2004年に逮捕された事件の全容を描いた本作。
事件当時、テレビや2ちゃんねる等でものすごい騒ぎになっていたのは今も覚えている。本作を鑑賞後、当時の騒動を思い出すと、だいぶ偏った報道がされていたような記憶がある。
思えば、まだ当時は「著作権とは何か？」そういった意識が低い時代だったのだと思う。利用する側やそれを取り締まる側のルールが曖昧で、それ故に開発者が逮捕されされるという前代未聞の事件へと発展してしまった。
自分の開発したものが犯罪に使用された、もしくは使用されるかもしれないとして、開発者自身が責任を負う必要はあるのだろうか？？
そんなことになったら、とても怖くて誰も新しいものを作ろうと挑戦しなくなってしまう。実際に、金子氏の逮捕によって日本のプログラム開発は大きく停滞したとも言われている。
"出る杭は打たれる"みたいな日本の保守的な考え方は非常にうんざりする。
金子氏が逮捕されず、今も存命だった世界線を想像してしまう。
映画としては、東出昌大が演じた金子氏と彼の弁護団とのやり取りが物語の中心となっているが、並行して、警察の裏金疑惑を世に明かそうとする一人の警官の姿も描きながらテンポよく進む。
特に主演の東出昌大は演技力に疑いがあったり、スキャンダルのイメージもあったりと、あまり印象がよくなかったが、今作に限っていえば役作りに力を入れていた様子が伺えて、とても素晴らしかったと思う。
作品の規模的にはあまり大きな作品ではないが、日本で起きたニュースを題材にした作品としてはかなり完成度は高い。
