このレビューはネタバレを含みます
いじめ問題に抗うべく真正面から描く。
直球勝負が個性とも言える大名作。
中盤の2人が幸せそうに遊ぶ一連のカットは繊細なピアノの劇伴もあってとっても美しいシーン。多幸感に溢れすぎて、このまま終わるわけないよなあという不安な気持ちは当然的中するのだが、ラストはホッと胸をなでおろす。
演出撮影技法・役者の演技力・脚本の厚みが三位一体となっており、突飛な展開がなくても誠実でハイクオリティな作品は感情を揺さぶる。
とにかくしつこいくらいに「受験」のワードが出てくるのも特徴。受験戦争やその先にある格差社会(共産主義なのに)が根本の原因で、それがいじめというかたちで表出化されている、というメッセージを含ませているのは間違いなさそうだ。
序盤で、2〜30代であろう刑事が「自分たちの時代はいじめなんてなかった」と発言したのも気になった。いじめが社会問題として認識されたのは中国では最近なんだとしたら、今作のような作品の意義は計り知れない。
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鑑賞中に少しだけ既視感があった。
後半のサスペンスパートは東野圭吾作品だと思うのだが、いじめ描写については具体的な作品は思い出せない。
『リリィ・シュシュのすべて』や『ミスミソウ』か?と思ったが、前者は岩井監督の霞がかった演出が、後者はムラ社会の閉塞感とあまりにも行き過ぎた悪意が目立っており、今作のものとは少し違う。
既視感は、現実での体験に基づくものなのではと気づく。いじめ描写への共通認識がある時点でもう既に問題なのだと気づかされる。
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脚本のパワーにも負けず劣らずの素晴らしすぎる映像センス。日常に緊張感をうむアプローチとして大正解を連打してくる。『三体』の監督なのかー。『三体』はただいま原作予習中なので楽しみが3倍増しくらいになった。