2年まえに見て以来の再見。名作。
真っ正直でド直球の元ヤクザ三上の生きざまと中途半端で小細工好きなテレビディレクターの日常を交差させる。社会の異分子たる三上は周囲の善良な人々に支えながら再出発に努力する。その過程がじれったいほどに熱く、背中を押してあげたくなる。
その一方、三上の存在はハンパ者の若者の人生観を変えていく。生々しい人生をたどってきた三上に触れていくうちに、若者の目つきや仕草が変貌する。
「三上さんがいなきゃ困るんだよ」と慟哭していたが、彼はきっと再生して三上の一生を執念で書き綴ることだろう。
三上の人生に何らかの変化が押し寄せるときは、あらかじめ場面転換の「空ショット」でさりげなく暗示する。晴天のときもあれば一つ星がほのかに輝く夕方あれば「嵐の展開」を予想させる曇天もある。
実際の嵐の天候と三上の状況をかぶせて表現するあたりは、女性監督らしいセンスを感じた。
それと音楽の使い方がうまい。
マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲をアカペラで使うのも劇的な感傷を誘う。
最後は快晴ショットとタイトル「すばらしき世界」をバーンとアップするのだから、ルイ・アームストロング『What a wonderful world』を謳いあげたほうがいいでしょ。整合性がつくんだよね。
涙腺ポイントはいくつもある。
特に三上が思い出の地で子どもたちとサッカーに興じるシーンにはヤラレた。すばらしき映画だ。