マグルの血

耳をすませばのマグルの血のレビュー・感想・評価

耳をすませば(2022年製作の映画)
2.8
「耳をすませば」のキャラクターが大人なったストーリーを実写でやった話。

またもメディアミックスのしんどいところが露呈したという印象。原作未読。ジブリ版、大好きです。

原作(アニメ)のファンからしたら概ねダメだろうなあ。開始数分で聖司君はバイオリン職人じゃなくてチェロ奏者になってるし、雫が口ずさんだ歌はカントリーロードじゃなくて「翼を下さい」だし。私は嫌な予感しかしなかったし、最後まで観たけどやっぱり刺さらなかったです。

本作は大人になってからの話だけでなく、ちゃんと過去回想として中学生のときのエピソードを時々挟みます。アニメ版をほぼなぞるような内容なので、未視聴の方向けなのでしょうか。物語の整合性を取るために必要だったのかもしれないけど、微妙にアニメと内容が噛み合っていないのが気になるし、カントリーロードをやらない点は本当にいただけないです。

で、肝心のストーリーなんですけど、前半は悪くなかったんだけど、イタリア行ってからあたりはちょっと私には合わなかったです。設定が不自然というか、ツッコミどころが多いというか。
10年後の雫と聖司のキャラクター像がなんかしっくりこなかったのが特に大きくて。聖司のイタリアでの振る舞いがなんか腑に落ちないというか。私がうまく言語化できないのは、原作ファンであるが故に改変された設定が納得いかないせいであることは明白なのですが、それを差し引いても「耳をすませば」という物語に初めて触れる人が満足できるような内容ではない気がする。なんというか、普通。

アニメ版の数々の名シーンの再現やオマージュは良かったですよね。とも言いたくない。アニメ版をジブリのものとするためにカントリーロードを使わないことにしたと言うならば、なぜアニメ版を想起させるような演出を盛り込んでいるのか。何か大人の都合でもあったのでしょうか。邪推してしまいます。

夢を追うことと大人になること。成長するということを描きたいのであれば、フォーマットは耳すまじゃなくても良かったような気がします。アニメに寄せた演出が出るほど、アニメから改変された設定や想像するそれぞれの登場人物のイメージの違いがノイズになってしまう。

アニメ版のファンからすればかなりノイズだらけの映画でした。キャストが豪華なので惜しいなあ。


追記
なぜこんなにも「カントリーロード」に皆固執するのか、人それぞれ理由はあるけど、私は雫が訳したという設定の日本語詞がとても素晴らしいと思ったからです。
こんなに美しい歌詞どうやって作ったんだと思って調べてったら素敵なコラムを見つけたので添付します。

https://www.webchikuma.jp/articles/-/2902

2024年 48本目
マグルの血

マグルの血