よしまる

ミナリのよしまるのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.3
オンライン上映会のお題。

自分勝手な旦那、我慢しながらも文句タラタラな嫁、小賢しいガキ、うるさい婆さん、基本的にそういう設定って見ててしんどい。もうちょい仲良くしろや、相手を思いやれや、と思ってしまうわけで。

農業で一旗揚げようとアーカンソーの田舎に越してきた韓国系移民のイさん一家。
慣れない生活に家族はギクシャクし、絵に書いたような家庭不和、トラブルが続発する。そしてとんでもない悲劇が、、

この悲劇、ばあちゃんがやらかしてしまい、、って話なのだけれど、普通に考えて映画的に過ぎるんちゃうの?!と思いきやなんと監督が実際に経験したことらしい。
よくある「真実の物語」ではないけれど、経験に基づく作品づくりはやはり強い。

話が逸れた。互いに不満を抱え、関係にヒビが入り次第に家族が崩壊していくのもよくある話。
しかしながらこの家族には揺るがない愛がある。直接的な描写は無い。むしろこじれてこじれて、しまいにあんな悲劇が訪れて、普通なら空中分解しそうなものだけれど、彼らには最後まで家族を愛する想いが消えることがなかった。

無論そうだ、彼らの衝突は自分本位ながら必ずしも自分のためではなく、あくまで家族のために尽力した結果であり、皆で幸せになろうとする根っこの部分は揺るぎないものであった。
そこに、とても感動した。

こういう時ほんとに自分勝手ならとっとと別々の道を行くはずで、しかしこの家族は対話することをやめない。きちんと主張するし、逃げることなく、最後まで向き合う。ああ、いい家族だなぁ。

俳優さんたちの演技、特にわざわざ韓国から呼ばれたおばあちゃんの自然体なそれはまるで本物を呼んできたみたい。一生懸命走る子役も大変素晴らしい。

他所んちの話として片付けられない、強い意志と絆を見せてもらうことができて、とっても嬉しかったんだよ、きっと。