このレビューはネタバレを含みます
翻訳版と原文の両方を読んでいた本が映画化。観るしかない。
原作はオハイオ州ミドルタウンとケンタッキー州ジャクソンにルーツを持つ著者が自身の幼少期を淡々と振り返りながら英字新聞だけでは得られない米国の様子をこれでもかと盛り込んでくれるので大変ありがたかった。
ヒルビリーと呼ばれるアパラチア山脈周辺は強固な民主党地盤だった。それが1970年代からリチャード・ニクソンを心の拠り所にしていたそうで以降は赤い州へと様変わりした白人労働者層ついて知ることが出来る。彼らは教育を受ける気力を失くし大学を卒業せずに労働者の一員として代々続いてしまう。産業が衰退し仕事を失い働く意欲が失せ福祉だけで生活し移住することは叶わず朽ちていく。貧困は伝統であると著者は語った。
肌の違いを表す言葉や優劣に使われる言葉も紹介してくれる。“WASPs(ホワイトアングロサクソンプロテスタント)”、"black people""Asians""white privilege(特権的白人)"”rednecks”(赤く日焼けした首)”white trash”(白いごみ)、そして"hillbilly(田舎者)”。
進化論やビッグバン理論は赤い州を占めるキリスト教福音派(evangelical churches)が対決すべきイデオロギーであることも教えてくれた。『進化論でも信じ始めたのか?ハハハッ』のような台詞を映画でよく聞くのはそういうことかと納得。
映画では著者と法曹界の面々との会食中に著者の出身地に対してrednecksが使われていた。"another planet"とまで言われていた。この場面が特にお気に入りでちらりと登場するフィリップローズマン弁護士役のスティーブン・クンケンさんのファンです。
(the Scots-Irish)ヒルビリー独特の家族との強烈な絆と懸命に貧しさから抜け出そうとする彼らと主人公J.Dの成長を綺麗な映像と音楽で見届けた。幼少の頃のJ.Dのお顔が父親と全く似ていないことが彼の環境をそっと伝えてくれる。
最近ではblack peopleのbを大文字にすることで彼らに対し敬意を表すようになったと米国の報道で知ったので映画”ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜”のレビューでそう記した次第。
ヒルビリー家族の絆についてはガラスの城の約束がすんばらしかった。
グレン・クローズさんにそろそろ賞をあげてあげてー。