鷺宮テラス

鳩の撃退法の鷺宮テラスのネタバレレビュー・内容・結末

鳩の撃退法(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

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「そのさ」
「あ?」
「さっきから推してるそれ、そのいかにもみんな知ってますみたいなやつ」
「なに」
「中野ふれあいロード。なんなのそれ」
「中野ふれあいロードは、中野ふれあいロードでしょ。みんな知ってるに決まってるでしょ。東京といえばほら、新宿歌舞伎町?渋谷センター街?それとおんなじだよ」
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原作の文章がどのように映像化されるのか心待ちにしておりました。中野駅北口を出ると正面に中野サンモール商店街。サンロードではない、吉祥寺のそれよりも歴史の古いサンモールを北上すると右手に見える銀座コージーコーナーから右に曲がれば陸蒸気(おかじょうき)、巨大な炉端で焼くお魚がとにかく美味しい。ランチでも魚の種類がたくさんあって夜に行けば〆の毛蟹の味噌汁は売り切れる前にキープさせてくれる。そのままサンモールを歩いていると中野ブロードウェイ入口が見えて入らずに左へ進み中野通りにぶつかる直前にミスタードーナツがある。津田はそこで執筆活動をしている。サンモールに並行するようにまさしく本通り裏のように中野ふれあいロードがあり津田が勤めるバーがある。

映画では東京編は中野ではなかった、失意!どれくらいかというと"来る"の映画では阿佐ヶ谷と石神井公園が使われなかった時よりも辛く、高円寺の蒙古タンメン中本が、いや三鷹の沖縄料理"名護味処"が閉店した時のショックくらい大きい(伝わらない)。ラフテーが絶品だった。このラフテーの次に満たしてくれるのは兵庫県三田市にある"蕎麦いち"の豚の角煮しかないのだ。


似ても似つかないけれどこのような雰囲気で長々と語ってくれる津田の心情、背景描写を本作はうまく端折って製作陣はしてやったりの顔をしてそうだなと思いながら鑑賞した。自分が本の中で好きだった部分はほとんど使われなかったけれど読み込んでいるのは伝わってきた。濱口監督だったらどんなものになったのかなと勝手に想像して少しわくわくした。それはそうと映画化ありがとうございます。たのしめました。
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