金宮さん

逆光の金宮さんのレビュー・感想・評価

逆光(2021年製作の映画)
3.0
ワンダーウォールで岡山天音さん若葉竜也さんという達人に紛れながらもしっかり存在感をはなっていた須藤蓮さんと中崎敏さん。そのお2人が主演しかも須藤さんにいたっては監督まで!というところで気になり拝見しました。

渡辺あやさん脚本、大友良英さん音楽という盤石すぎる座組で25歳の初監督作品が製作できるという時点でとても恵まれた背景を想像するのですが、そんななか文学性の非常に強い作品とするのは好印象でした。

須藤さんは棒演技の疑いもありましたが、最後海辺のシーンの表情は素晴らしかったので昭和風演出のためのあえての棒読みだったんでしょうか。

メンズノンノオーディション出身で業界に愛される棒演技の長身イケメン。今や演技派に超進化を遂げた山籠り俳優さんを想起させ、引き続き要注目ですね。


以下、全く自信がない解釈。
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テーマは晃によって引用される三島由紀夫の反貞女大学の一節「しかし恋愛というものは、社会と正面衝突しなければ、本当の恋愛ではなく、その時代の社会に有害と考えられるのでなければ、恋愛の資格はありません。その時初めて恋愛は文化に貢献したのであります。」にありそうです。

文化貢献とはなんぞや。たとえば今作設定の70年代と比較すると同性愛への理解は、現在格段に深まっている。その深まりは学校教育というよりは、様々な文化活動がもたらしたものでしょう。この文脈でぱっと思いうかぶのはやっぱり「仮面の告白」。恋愛による情感は作品発表にまで至るし、そうしたものほどパワーがある作品となりここでいう文化貢献をうむ。

対比はそれっぽい国際政治議論をしていた若者たち。彼らの発言はどことなく空虚で音が鳴ってるだけな感じ。三島の引用も粗雑でしたね。おそらくは議論するために議論してるんでしょう。悪い意味で体制への配慮もあり、正面衝突には至っていない。

とっても大雑把にいえば、若いうちは忘我するほどの熱い気持ちを持とうぜ!的なことなのかなあと。「恋愛」が三島由紀夫の言葉を借りて熱い気持ちの象徴。熱さなんてだいたいが社会有害である。社会有害だとより熱くなり、そして熱くなると作品になる。作品が時代性のアップデートを生む。
金宮さん

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