彦次郎

THE FIRST SLAM DUNKの彦次郎のレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.1
神奈川県代表湘北高校とインターハイ3連覇の秋田県代表山王工業との試合を軸に宮城リョータのバスケ人生も描いたスポーツドラマ。映画館で観ると実際の試合を見ているような臨場感に加え丁寧な心情描写でアニメという分野を超えて邦画史に残るであろう作品です。監督・脚本は原作者でもある井上雄彦氏。
本作は文字通り「試合」でもあるためぜひ先入観なく鑑賞していただきたいので映画本編の内容には詳述しませんのでご了承ください。
『SLAM DUNK』は1990年代のジャンプ黄金時代を代表する漫画…というよりもジャンプ歴史に残る…更にいえば少年漫画史を代表するバスケットボール漫画で個人的にはスポーツ漫画としても最高峰にあると思います。連載時にバスケ部員が大量発生していたことからも影響の大きさが窺えます。何が言いたいかというと、それだけの名作の中でも本作で描かれている山王戦は原作でもクライマックス且つ最高の試合(違う方いたらすいません)にあたるということです。
テレビアニメ版はそのインターハイ戦がなかったので期待値が異常に高くなるなか、テレビアニメ版からの声優変更などの不評(発表が公開の1ヶ月前くらいだった)を覆し2022年12月から現在(記載時2023年6月)時点でも映画公開されているというところからも驚異的でもあり、このクオリティに仕上げた制作陣(もちろん井上先生も含む)は素晴らしいです。
とはいえ主役が桜木からリョータに変わり話の構成上どうしても仕方ないのですが原作で激熱だったところが淡泊な表現(リアルだからともいえるけど)だったり、カットされていたりしたことで薄味に感じてしまったところは残念でした。あと個人的には宮城リョータも好きなキャラですが丁寧すぎて彼のパートが少し諄く感じてしまいました。例えるなら最高の素材を使って最高の料理人が定番とは少し味を変えた凄く美味な料理を出してきたみたいな感じといえばよいでしょうか。これを読んで気を悪くされた方は原作原理主義者の戯言としてご寛恕ください。
試合相手である山王工業はレギュラーがスーパープレイヤーで中でも沢北が超一流選手ということで本作でもクローズアップされていましたが個人的には通称丸ゴリである河田雅史が洞察力と対応力が本作でも光っていました。リョータが主役でも試合メインという根幹がぶれていないためか各登場人物たちの存在感があったと思います。

余談。
職場の同僚から本作を鑑賞するよう強く勧められ本作を鑑賞しました。推薦者の方は原作未読かつ若者(連載終了してからだいぶ後の世代)ですが「絶対映画館で観るべき」と絶賛しており、そのことからも本作は古びない傑作であることがうかがえました。
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