ルーク大佐

サイレント・ナイトのルーク大佐のレビュー・感想・評価

サイレント・ナイト(2021年製作の映画)
3.4
毒ガスが猛威をふるって明日死ぬことが確定している場合、もだえ苦しむことを選ぶか、あるいは家族と共に薬で安楽死を選ぶか。
あなたならどちらを選ぶのか、究極の選択を迫るストーリーだ。

平時の日本で暖かい部屋でポテチを喰らいながら映画を見ているようなシチュエーションならば、自死を選ぶことを拒否する人もいるだろう。ホントに毒ガス死を回避する方法がないのか確信を持てないからだ。気持ちに余裕もあるし。

ところが危機が目の前に迫っているときに自死を選ぶ人がいるのは事実だし、それをわかった風な口調で批判することはできない。

日本でも有名な哀しき事件がある。
太平洋戦争の終戦時、北海道の樺太で真岡郵便電信局事件が起こった。
日ソ不可侵条約を一方的に破った無法者のソ連(現ロシア)人が日本の占領地や領土に攻め込み、乱暴狼藉を犯していたのだ。当時10代少女も郵便局では働いていた。樺太の郵便局で働く日本女性の電信員は、ソ連兵の上陸が伝わると彼らの乱暴行為を恐れ、青酸カリ等で服毒自殺を選んだ。

こういう哀しい事件は現在の日本では想像できないことだが、世界の紛争地帯では似たような話は無数にある。現在のウクライナもふくめて。

映画ではあくまで苦悶死か安楽死の選択であるが、仮にテロリストや敵国軍の侵略行為によって高確率で死ぬリスクが避けられない場合、「拷問・凌辱・強姦死」VS「安楽死」の2択ならば、どちらを選ぶのか。
大多数は安楽死を選ぶのではないだろうか。

このような悲劇を繰り返さないためにも、そもそも平和を守りたいのならば無法者の敵がビビるような抑止力が不可欠なんだよね。
家の周囲に鉄壁を築いて敷地内に猛犬を放し飼いにしておけば、ゴロツキや強盗は恐れをなして侵入してこない。対人地雷をまいておけば完璧!

さて、映画の話に戻ると、本作は同時期の話題作『ドントルックアップ』とよく比較されてた。どちらも家族との団らんで最後の瞬間を迎えるシーンを描写していた。

本作は禁じ手ともいえる『ミスト』に見習うとは……これが英国流のブラックユーモアなのかー。
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