すずき

デリシュ!のすずきのレビュー・感想・評価

デリシュ!(2021年製作の映画)
3.7
革命前夜の近世フランス。
宮廷料理人マンスロンは、公爵への忠義は厚いが、それ以上に料理人としてのプライドが高い男。
彼は渾身の創作料理「デリシュ」を食事会のメニューに加えたが、芋と茸を使った料理は豪華で優雅を是とする貴族達に理解されず、彼はクビになってしまう。
失意の中、郊外実家に戻り馬車中継場で宿を経営するマンスロン。
だがそんなある日、彼の噂を聞きつけた女性ルイーズが弟子にして欲しいと現れるが…

貴族達によって「美食」が独占されていた時代に、史上初めて万人に開かれた「レストラン」を作り出した実在のシェフを元にした作品。
「宮廷から追放された料理人の俺、国一番のレストランを経営する事に。復帰して欲しいと懇願されてももう遅い。弟子の女の子と息子で快適スローライフ」
みたいな話かと思ったけど、そんな都合のいい展開だけではなかった。

ヒロインであるルイーズは有能な中年女性。
主人公から料理を学ぶ為、玄関前で雨ざらしで待ち続け、全財産の金貨3枚を支払っても居させて欲しい、と言って弟子になる。
しかし従順なだけの奴隷ヒロインじゃなくて、主人公がスケベ心を起こすとその首にナイフを突き立てる強さも持つ。
実は彼女には隠された秘密があって、主人公の所に来たのもある目的の為で…、と盛りだくさんのキャラクター。
そしてレストランの原型を作ったのも彼女。
彼女がいるとレストランが繁盛し、いないと閑散としてしまう。チートスキルを持ってるのは彼女なのでは?
シナリオ的な重みでも主人公が霞んでしまうのは作品の欠点かも…。

クライマックスは因縁の伯爵と悪役令嬢に「もう遅い」で恥をかかせて復讐して、ざまぁでスッキリ!
エンドロール前の最後の映像では、小麦粉をぶつけ合って遊ぶ2人の仲良さそうな関係にほっこり…いや、食べ物で遊ぶなッ!!

贅を極めた豪華な料理や、貴族の服やドレス、髪型などの宮廷文化も、ちょっと身なりのいいフツーの人達の服や食べ物も、どちらもしっかり描かれていて興味深い。
絵画のような画面構成も素敵でした。