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美少女戦士セーラームーンセーラースターズのtubameのレビュー・感想・評価

4.8
90年代版セーラームーンアニメの最終シリーズ。
新作映画公開に合わせてYouTubeで配信されたのを機に再視聴。
軽い気持ちで観たのにもう面白くて面白くて。終盤は何度も泣いたし、そのままの勢いでBlu-rayを購入し新作映画のために嬉々として映画館へ。
まさか今になって再ブームがくるとは思わなかった。三つ子の魂百まで...


前半の6話は前作Supersから地続きの『ネヘレニア編』、後半は新しいセーラー戦士3人組・スターライツも交えて描かれる壮大なセーラーウォーズ『スターズ編』の2部構成。
一時は社会現象を起こしたセーラームーンも徐々に人気に陰りが見え始め本作で遂に幕引きに至るのだけども、作品の象徴であったOP曲「ムーンライト伝説」を変更したり大胆なオリジナル展開を採り入れる一方、初代オマージュも組み込むなど攻めの姿勢で独自性が際立つ本シリーズはまるで最後に放たれた大きな打ち上げ花火。


前作Supersはちびうさがメインのせいか低年齢向けっぽくなった印象があり、個人的にはそれほど好みではなかったが、初期の大人な雰囲気に戻ったスターズはおぼろげながら結構好きだった記憶がある(後半ちびうさは登場しない)。
1996年の作品ということでさすがに価値観や表現で古さを感じる部分もあったけど、今観ても変わらずワクワクできる部分と、大人になったからこそ分かる面白さとがある良作だった。
今観るとうさぎが女神レベルで優しく、自己犠牲の精神が強いことに驚かされた。どんな人とも話し合えば分かり合えるってスタンスだし、基本受けとめる側。10年後の作品「プリキュア5 GoGo」を同時視聴していたが、方向性としては真逆に近いので10年での女児アニメの変遷を興味深く思った(まあセーラームーンはかなり大人向けだけど)。


実質の番組スタートである『スターズ編』について絞って書くが、最大の特徴は3人組のアイドル・スリーライツを話の中心に据えたことだろう。
うさぎたちの高校に転校生として現れる設定は原作通りながら、男装の麗人設定から男性に変更(変身すると女性の3人組スターライツに!)したことで、学園青春モノとしての側面が強く打ち出された。
大人気アイドルとの学園生活って設定が面白くないわけない。仲間たちがスリーライツに夢中で賑やかにワイワイやってるのも高校生らしくて好きだ。歩く参考書なんてあだ名をつけられた優等生の亜美ちゃんまで夢中なのが可愛い。
終盤はシリアスで絶望的な戦いが続くだけに、この前半の楽しい日常がキラキラしたかけがえのないものだったと後から胸に染みてくるんだよなあ...。
スリーライツは歌も名曲揃いで、そのメッセージ性の強さに何度聴いてもグッとくる。


また、本作はスリーライツの一人・星野光が、不在のタキシード仮面こと衛に代わってうさぎとのロマンスを繰り広げたことも大きな特色のひとつだ(星野はうさぎを『おだんご』と呼び、出会いも初期の衛と重なるように描かれているのが実に巧妙)。
これはファンの間でも当時から評価が割れたようだが、個人的には滅茶苦茶良かった。元々うさぎと年齢差が大きい衛があまり好きではなかったので、同い年の対等な立場で喧嘩しつつ仲を深めていく二人の関係性は魅力的で、やんちゃだけど一途でいざというときは頼りがいのある星野を自然と応援していた。
名台詞「俺じゃだめか...?」が飛び出す回は謂わずもなが神回。そこに至るまでの感情表現が凄く繊細で丁寧に描かれてきたからもう本当に切なくて。うさぎは月のプリンセスで恋人もいる。切なくて美しい『銀河一身分違いの片思い』...(同名のキャラソンは名曲なので必聴)。仮の姿である星野がする本物の恋に胸が熱くならないわけがない。


星野役の新山さんは女性だけど変身の前と後で性別が全然違って聴こえて、素晴らしい技術力。
変身後のファイターも強くてカッコ良くて常にうさぎを守る姿が大好き。ジェンダーの問題とか関係なく、変身前も変身後も一人の人間として最高なんですよ星野(もといファイター)は...!
個人的にはうさぎも惹かれてたけど、最後のアレは気付かない振りをしたと解釈してる(そうじゃないと辻褄合わんし)。結末がどうあれ自分は星うさを推していく所存!


元々全34話と短く、星野以外の二人(大気と夜天)はやや割りを食った感じがあるので二人とセーラー戦士たちの交流ももっと観たかったな~。
何かスリーライツの話ばかりだけど、既存キャラも魅力的。いつも喧嘩していても真っ先にうさぎに寄り添うレイとか、やっぱりはるか&みちるは最高 とか沢山見所ある。はるかと星野のうさぎ大好きモノ同士のバチバチとか一周回って愛おしい。
あと原作が前世からの運命・使命が前面に出てるのに対して、旧アニメ版は仲間はうさぎの人柄が好きで対等な友達関係が強いのがやっぱり良い。
他のシリーズみたくもっと尺があれば更に色々描けたと思うので、とても残念。


ともあれ、本作に再び出会えたことに感謝してやまない。これこそミラクルロマンス!
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