ユウ

DARKER THAN BLACK -黒の契約者-のユウのレビュー・感想・評価

DARKER THAN BLACK -黒の契約者-(2007年製作のアニメ)
4.2
映画好き用アニメその1。
007をはじめとしたスパイ映画と能力バトルものをミックスしたアニメ。
かなり重厚でシリアスな作品である。全体的に情緒的、詩的な雰囲気、言い回しが散りばめられおり見応えがある。

突如南米と日本に発生したゲートと呼ばれる謎の領域。それに伴い契約能力と呼ばれる特殊能力を開花させる人々、そして星空は契約者たちの活動を表す偽物の空になり人類は宇宙開発という希望を絶たれている。
曰く契約者は感情が希薄で、夢を見ず、花粉症にもならないらしい。

主人公の黒(ヘイ)は普段はリー・シェンシュンなる中国人留学生を装って、カタコトの日本語で話す。
実際の国籍、出自は一切不明。
この点は聞かれてなくても本名を堂々と名乗り、出自も(必要がなければ)全く隠さないジェームズ・ボンドとは対照的。

類似した点としては、
007では食事のシーンから文化的背景や現在の状況を物語るのがお馴染みだが、本作主人公の黒も食事のシーンが多い。
そしてボンド・ガールならぬ黒・ガールと俗称される女性たちの存在。時に守るべき対象として、時に敵として現れ、次エピソードにおいては別の黒・ガールに切り替わる。
その立場はまさにボンド・ガールそのもの。

他にも雇っている組織が巨大化し過ぎているという要素は、映画レオンのように単純な敵味方では括れないジレンマを抱えている。

そういったスパイ映画のオマージュを多様に取り入れつつも、特殊能力者(契約者)と通常人の立場や本質の違いを探究していく骨太なオリジナリティを備えている。

契約者たちは能力を使うために対価と呼ばれる何らかの活動を行う必要があり、
酒を飲む、服を脱ぐなど、簡便でいつでも出来るものから、
自身の指を折る、一定期間歩行できなくなるなどの身体的負担が大きいもの、
ホットミルクを飲む(冷めたらダメ)、ゆで卵を食べるのように準備にやや面倒があるもの、
周囲の靴を揃えて逆さまに並べるという意味不明なもの、
歌うと火が上がる、流した自身の血を周囲物質ごと消し去るのように能力と一体化しているもの、
果ては若返る(幼体を超えると消滅する)、急激に老いる、精神が変性するなど超自然的なものまで様々。
そして必ずしも能力の強さや影響規模と対価の重さは比例するとは限らず、極めて簡便な対価で作中最強クラスの契約者もいれば、逆に最弱クラスなのに対価がえげつない契約者もいる。

ちなみにMI6も登場するが、残念ながらMI6エージェント達は堂々と本名を名乗ったりはしない。そしていわゆる00エージェントも存在しない。
エピソード単位ではスパイ映画的だが、シリーズ大枠としては新人類である契約者と既存通常人の共存あるいは闘争がメインであり、全体で見るとX-MENシリーズに近いかもしれない。
ユウ

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