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中二病でも恋がしたい!の都部のレビュー・感想・評価

中二病でも恋がしたい!(2012年製作のアニメ)
3.4
今は亡き京都アニメーション大賞の初の受賞作となる本作は、緩やかな青春劇を通して厨二病という未熟ゆえに美しいペルソナの担う役割とそれからの脱却の是非を語る物語である。

作品によっては──たとえば類似作品のAURAなどはこの例に含まれる──痛みを伴う青春の傷として扱われる厨二病だが、本作においてはその対外的な扱いは良い意味で生温く処理されており、小鳥遊六花個人の過去の深層に切り込む時のみ世界の酷薄さと直面する構図となっている。そこに物足りなさを覚えるのは事実だが、厨二病を卒業した富樫が厨二病に救われた六花を通して、過去の自分に重ねる形で彼女を力強く肯定するという構成は1クールのアニメとして非常によく纏まっている。

"可愛い"のアイコンとして消化されるばかりの厨二描写に小言の一つや二つを漏らしたくなる気持ちはあるが、小鳥遊六花を初めとして日常に点在する可愛気のある個人達の集結とそれらが形作る蕩めく雰囲気の構築により、その都合の良さの受け皿が早々に示されることもあってそれが作品の味として納得出来るだけの段取りの良さは感じられる。

扱う言語──厨二病の言語は異国の言葉と時に同義である──の擦れ違いを念頭に置いた掛け合いの楽しさが肝の作品なので、派手な起伏を作らなくても日常描写が退屈になり過ぎないのはなるほどなと。また風景美や日常描写に表現力を伴わせる京都アニメーションの作画が織り成す物語として、個人的に肌に合っていると感じるのはこうした緩やかな日常を描いた作品なので、そういう意味も含めて肩に力を入れずにスルスルと呑み込める作りのアニメだったのも好印象。
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