Taul

スモール・アックスのTaulのレビュー・感想・評価

スモール・アックス(2020年製作のドラマ)
5.0
第1話『マングローブ』
説明いっさいなしで1968年のノッティングヒルに連れていかれる。当時を再現するんだというマックイーン監督の熱意が画面から溢れ出ていて役者、美術、音楽とその説得性が凄い。『シカゴ7裁判』と同じ年イギリスでこういう黒人差別があったとは知らなかった

第2話『ラヴァーズ・ロック』
1話目とはまた違うとんでもない出来。1980年、西ロンドンでのレゲエのハウスパーティーの一夜だが、もうその家に忍び込んだような密着感とグルーヴ感。音楽の力、コミュニティの力、若さの力が充満する。私的にはディスコを開催してた若い頃が蘇る

第3話『レッド、ホワイト&ブルー』 ジョン・ボイエガが、フォース(警察)入りでジェダイというジョークがあったが、SW後半の扱いの酷さがすっ飛ぶ程の力演。警察内での孤立が辛い。父と息子の物語でもあり、学校入り、似た姿、ラストと静かな語りに涙した。充実のドラマ回。

第4話『アレックス・ウィートル』
主人公が刑期中に文学に出会い成長。マルコムXや錦之助武蔵と似た集中的読書。C・L・R・ジェームズの「ブラック・ジャコバン―トゥサン=ルヴェルチュールとハイチ革命」が1話に続きキー。ブリクストン蜂起ら社会背景も見られ痛々しい作家の半生。

第5話『エデュケーション』
最後はマックイーン監督自身の少年期へ。それも差別の連鎖を断ち切る教育の話。特別支援学校の授業が恐ろし過ぎる。3話を受け宇宙規模の想像力と、真のルーツに子どもの笑顔という帰着。監督とこの作品が希望という見事なアンソロジーの締めだった。

*

『スモール・アックス』遅ればせながら見たが、素晴らしいシリーズだった。イギリスにおける20世紀後半の黒人差別の再現による歴史的な証言であり、アンサンブルで見せる映画の新しい形のようにさえ感じた。勧めてくれた方に感謝。番組公式やピーター・バラカンのPodcastや、解説などにも触れだした。
Taul

Taul