キッド

エルピス—希望、あるいは災い—のキッドのレビュー・感想・評価

3.0
論評が少し難しい作品。
個人的にはあまり刺さらなかったというのが本音。

正しさを追求することは大切だけど、そのために失われる物が多過ぎる。
大門の娘婿は命を落としたが、そこは一切報道されていない。
大門副総理は叩かれつつも、のらりくらりと躱して政界に生き残る。
金、自分の地位を守るために容赦ない手を使ってきた刑事は何事もなく平穏な日常を送っている。
ここまでして獲得できたのは松本死刑囚の釈放と被害者遺族への事実の提示のみ。
もちろんこれは大きいことではあるけども、そのために失われた物があまりに大き過ぎる。
世間の現実感は非常にある。
自分が当事者だった場合どうなんだという綺麗事を言われると何も言えないけど、当事者にならない限り出来るだけ関わりたくない、自分の生活を守る方が優先というのが本音。
それは自分だけでなく、ほとんどの人がそうだと思うから、このドラマを観ても世間は何も変わらないと思う。
そう言った意味では脚本家や監督が伝えたいメッセージは世間へは届いていないんじゃないかなと感じる。

1つのヒューマンストーリーとしては構成もよく作られた作品だとは思うけど、そこまで非常に面白い!刺さった!っていう作品ではなかった。

村井さんと浅川と岸本の関係性は良かった。
無鉄砲に感情の趣くままに動くが浮き沈みの激しい浅川と岸本を、経験に基づく確かな信念でしっかりとサポートする村井さん。
若さや人間性からしっかりとした信念の軸がない浅川と岸本は自分を見ているようで嫌だったな笑
逆に色々周りからの見え方は違うものの、自分の信念の軸をきちんと持っている村井さんは魅力的にしか見えなかったし、憧れだなって感じた。
そして村井さんと少し違う信念をもつ斎藤も、このドラマの中では悪役として扱われるものの、あの信念も一つの正義ではないかなと自分は思ってる。
脚本家達からはあまり好かれない正義だと思うけどね。

色々と伝えたいものは見えたけども、個人的にはあまり刺さらなかった作品でした。
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