りゅっくサック

フォールアウトのりゅっくサックのレビュー・感想・評価

フォールアウト(2024年製作のドラマ)
4.4
ゲーム好きなら誰でも知ってるベセスダ社の超有名人気洋ゲー「FALLOUT」
そもそも自由なオープンワールドゲームの実写化ってどうすんの?と半信半疑でしたが
プレイヤー次第で選べるルートを各主人公に割り当て、時にクロスオーバーさせるアイディアに唸った、実質1人マーベル。
これはもう!傑作。

オッペンハイマー(2023)でアカデミー賞を席巻したクリストファー・ノーランの弟ジョナサン・ノーランの腕前が素晴らしい。
脚本家あがりの彼は物語に沿ったカメラワークが上手く、今何に注視するべきかちゃんと教えてくれる。

さらにカメラワークがゲーム的で、コントローラーでキャラクターの周りをぐるぐる回るかのような映像。
衝撃の光景を目の当たりにしたキャラクターと同時に視聴者もその光景を目にする。
キャラクターと視聴者が同期されていく。

特に【第1話The Endの30分〜50分】ごろに注目して見てほしい。

Vaultで暴動が起きるシーン、ザラついたフィルムカメラのようで彩度が高いレトロ風な映像。

場面は転換してマキシマスのシーン。
冷たい白い空と砂と鋼は、B.O.Sが冷徹なカーストコミュニティであることを象徴するかのような寒色の色づかい。

そしてVaultに戻りルーシーが外界に旅立つ場面。
彼女が外へ歩き出すシーンはゲームのムービーのように滑らかかつ広大。
ルーシーが崖に立ち海辺を見る、レトロなザラついた画面がいっそう強調され、風に吹かれながら「受けて立つ」と一言。
その直後画面がハッキリとクリアになる。
古く閉じたVaultから解き放たれた彼女を表現しているであろう素晴らしいシーン。

ジョナサン・ノーラン、見事としか言いようがない。

秩序が崩壊したイカれた倫理観もきちんと描かれていて、何が正で何が悪か存在しないからこそルーシーの純朴さ(ある意味サイコパス)も際立つ。

ノンバイナリーのデイン役をセクシャルマイノリティ当事者の俳優さんが演じられてるのも最高。
アジア人の出演がちょっと少ないのが残念ではあるが…。

このように些細な気遣いや小物、原作ゲームのリスペクトが細部までこだわって描かれていて
シーズン2がわずか配信1週間で決定してしまうのも納得。
グール/クーパーの旦那も、もう馬に乗れないのに馬の鞍ずっと持ってカウボーイを気取った200年前に囚われたキャラクターで最高…。
もうクーパーの旦那に着いて行きますっ!って感じ、やさぐれおじって良いよね…。

また楽しみが増えてしまった。
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