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バビロン・ベルリン シーズン2のfyodorのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

バビロン・ベルリンはシーズン1とシーズン2と続きものになっているので、両方の感想をシーズン2の欄に書きます。

日本のドラマの100倍以上の桁外れの予算43億円をかけて制作されたドラマであるバビロン・ベルリン。時代はワイマール共和政時代だが、当然現代を表している。そうしないと観客は感情移入できない。
1929年が舞台だけど、その当時の貧富の格差の拡大や倫理基準の低下、女性差別、これからファシズムに進んでいくドイツの大都市の雰囲気を表していて、これらが現代を同じだ。貧富の格差は拡大し貧困層は増加し、倫理基準は上がっているわけではあるまい。女性差別は戦前に比べればよくなったがまだまだ不足している。日本はジェンダー指数125位の劣等国家で論外だが。

また、ベンダ行政長官の女中であるグレタさんは現代の「ネットで真実」の人を表している。自分で調べず他人から聞いた話だけで判断して間違った行動を取ってしまう人だ。そのような人物は自分にも周りにも悲惨な結果を導き、無責任に又は恣意的に間違った情報を与えた愚か者は遠くでほくそ笑んでいる。2016年の大統領選挙でワシントンD.C.にあるピザ屋が「子供の人身売買の巣窟だ!」と保守系ネットメディアが嘘をついて煽って真に受けた男が自分で全く調べずに銃を持って襲って警察に逮捕された事件があったがそれと同じだ。保守系ネットメディアの嘘で煽った連中は無傷で逮捕されていない。この事実を恐らく参考にしたのだろう。その後ドナルド・トランプに扇動された保守や右翼の連中がワシントンの議事堂を襲撃して逮捕されまくってどんどん有罪になりまくっている現代を考えると、バビロン・ベルリン シーズン1,2は2017年放送開始であることから非常に先見の明があるドラマだ。恐るべき優秀な脚本家集団だ。

現代も愚かで危険な権威主義や移民排斥等の非寛容、資本主義を後退させる新自由主義が台頭しているが、ナチスが台頭しかかっているこの時代も同様だ。従って現代を象徴する台詞も出てくる。
観劇に来たブリアン外相をジャーナリストがインタビューする場面だ。
「ブリアン外相、ドイツの政治情勢をどう思います?」
「歴史の浅い民主主義は常に不安定だが戦ってでも守る価値はある。」
 ブリアン外相とはアリスティード・ブリアン、フランスの外相、首相を務めた人物でイギリス、ドイツ、フランスを中心にした西ヨーロッパの友好を促進したロカルノ条約、国際紛争の解決手段として武力行使を違法とする不戦条約を成立させた人物です。ニュルンベルグ裁判、極東軍事裁判でナチス・ドイツ、大日本帝国を裁く法的根拠になった条約です。1920年代後半ナチス台頭前と同様に現代も世界の民主主義が危機になっているが、戦ってでも守らなければならない。
「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」チャーチルが言ったように民主主義は最良の政治形態だ。それに反する無能独裁主義にしてファシズムのプーチンもネタニヤフも暗殺してでも戦争を止めなければならない。

因みにヒロインのシャルロッテ・リッターだがモデルは「罪と罰」のヒロインであるソフィヤ・セミョーノヴナ・マルメラードワ=ソーニャをモデルにしている。家族を支えるために娼婦をしていて、妹がいて病気の親がいてダメ男が家にいる(姉か従妹が居候していて、その夫。ソーニャの場合はダメ男が父親でアルコール依存症)。ソーニャは最終的には娼婦を脱して仕立て屋を経営することになるけど、シャルロッテも警察の捜査官になってまともな給料を稼ぐのだろうな、という流れになっている。
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