キッド

ロングバケーションのキッドのレビュー・感想・評価

ロングバケーション(1996年製作のドラマ)
4.5
2回目のロンバケ視聴。
全てが美しい作品。

まずは画の美しさが別格。
キムタク、山口智子、竹野内豊、この面々の映え方は現代の俳優にはない圧倒的なレベル。
カメラワークも美しく、現代の発達したカメラでは作り出せない映像の美しさがある。
夕陽や夜景を利用して映し出すキムタクや山口智子は近年ではなかなか見られない映像美を感じた。
夜の街をタバコを蒸しながら車で走り抜けていくキムタクと山口智子の画はもう現代では撮れないね。。

また音の使い方が大胆。
突然音楽を止めたり、何曲使っているのというくらい多数の挿入歌があってそれを場面毎に使い分けていたり、凄い音楽を有効活用している。

またキムタクという絶対的存在をひしひしと感じさせられる作品でもある。
あらゆるシーンがキムタクだから映えるシーンに変わる。
あそこまでの存在感を出せる俳優はなかなか出てこない。
これは山口智子も然り。竹野内豊も然り。

3人とも非常に精神的に脆い一方、表では取り繕っているという非常に難しい役を演じている中で、あれだけの美しさと存在感を出せるのはさすがの一言だと思う。

そして松たか子や広末涼子の初々しさをしっかりと活かした役にしてるのも脚本のうまさを感じる。
汚れがなく純粋だからこそめんどくさい女となっていく役をやらせるには、あの年齢の松たか子や広末涼子はジャストフィット過ぎた。

ピアノを中心にストーリーが回っているが、本当の主題はしっかりと恋愛物。
各々が恋愛の価値観をそれぞれ持っており、悩みや葛藤を抱きながら、それぞれの道を歩んでいくストーリー。
画の力はトップ3が圧倒的だが、作品を語る上で脇役の面々の重要度は高い。
稲森いずみのももちゃんはキャピキャピしてると思いきや、きちんと芯をもって他人の悩みにもズバッとモノを言えるキャラで、この作品にももちゃんがいないと成り立たない。
教授は瀬名の指針となり続けており、最後のピアノの演奏の中でも回想で出てきたのは南と教授だけ。
それだけ教授は瀬名にとって大きな存在であり、自分も学生時代にこんな教授に出逢いたかった(知らん)
そしてルミ子も他の芸術的思考の人間とは少しだけ異なった考え方の人であり、独特な雰囲気を醸し出している。
そんなキャラ達の会話一つ一つが面白い。
それぞれがそれぞれの役割を全うして、そのそれぞれが互いにぶつかり合うことで作品の奥深さを作り出している。

そしてこの素晴らしい俳優達に北川さんの言葉選びを加えることも作品の美しさを高めている。
人生にはしばしのロングバケーションが必要。瀬名や南のロングバケーションを描くからこそ題名がロングバケーションってところがもうなんかすごい。

音、言葉、画力、役者の存在感、全てをとっても美しい作品で、これが90年代のトップ作品かと言われて納得の作品でした。
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