1986年4月26日に旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で発生した前代未聞の原発事故。その事故の様子と被害を可能な限り食い止めようとした人々の姿を描いたミニテレビシリーズ。
去年あたりから気になっていたテレビドラマ。全5話なので週末の夜に一気に鑑賞しました。日本でも他人事ではない原発事故の想像を絶する実態を、お遊び抜きの圧倒的なリアリズムを持って約5時間に渡り描いています。
史上最悪の人災とも言われたチェルノブイリでの事故。現地で働く様々な立場の原発職員、爆発直後の原発で消火作業を行った消防隊員とその妻、事故を調査する科学者、原因と責任を追求する国のお偉方。命がけで放射能を食い止める作業を行う作業員たちなど、多くの視点から事故を捉えていきます。
これは映画だと消化不良になりそうなスケール。だからこそドラマで合計5時間を越える長さを用いて、1つ1つのエピソードを丁寧に描写したのでしょう。
大体の人はそうかもしれませんが、原発の仕組みや放射能の恐ろしさについてはそこまで詳しくないと思います。僕もそうでしたが、そんな人でも出来るだけ分かりやすく説明がありますし、もし分からなくてもこの事故の重大さは間違いなく伝わるでしょう。
色んな登場人物の視点がある中、一番一般人寄りだった消防士夫婦のエピソードはかなり印象的でした。現地でいち早く消火作業に取り掛かった為に放射能を多く浴び、徐々に全身を蝕まれて苦痛の末死んでいった夫。ルールを破って夫に触れてしまい放射能の影響で子供を死産してしまった妻。救いが無さすぎてこれもまた悲惨な現実だと思い知らされました。
結末を1話の冒頭に持ってくるドラマの構成にも捻りがあり、そういった演出面でもしっかりと見せてくれます。余計な場面もなく、実際に発生した人災とも言えるこの悲劇を真正面から堂々と捉えて、圧巻の規模で再現したこのドラマシリーズ。娯楽という訳ではありませんが完成度は非常に高いもの。興味のある方は自信を持ってお勧めします。
