Kaji

ブラックドッグ ~新米教師コ・ハヌル~のKajiのレビュー・感想・評価

3.7
抑揚を抑えているし、どこにでもありそうな高校の誰にでも降り掛かりそうな苦難をじんわりと、かつ冷静な目線で描いてありました。平熱ドラマですが遠赤外線的な温もりがあります。

非正規雇用の新人として私立高に入った、コ・ハヌルが乗っけから落下傘(コネ入社)と噂され最初から孤立して始まりますが、配属部署の「進学部」の先輩たちや一歩ずつ経験を積んでいく姿。
冒頭が衝撃的ですが、ハヌルの人生に影響した出来事なので大切。
もちろん学校が舞台なので、受験も描かれたりドロップアウトする生徒がいたり。
平凡な人たちのマインドがかっこよかったり、「あー、辛いよな」「よく耐えたよぉ」と思いながら試聴してました。
朝の挨拶がちょっとずつ親しげに変わっていったり。

脚本家が教師経験のある方とどこかで見たのですが、エピソードの肌理が細かいというか当事者の視点が揺るぎない創作動機としてあるようで芯の強い作品だな、と思いました。

欠点としては生徒や先生間での格差は描かれるのにマイノリティが出てこない事で、それは韓国の学校を抽象化する上であえての事だったのかなと解釈しています。

学校ものって、熱っけのある先生が摩擦を起こしてドラマになったり、名言飛ばして生徒に押し付けたりしますが、そういう押し付けがましいところが一つもなかったのが好きでした。

サイダードラマや、ハイセンス演出、マクチャン、鮮やかな伏線回収、、とアッパーな質感のドラマが視聴数を伸ばしたりして目立ちますが、こういう地道なヒューマンドラマもいい作品を作れる韓国ドラマ界の厚み。


蛇足ですが、ヨヌ先生のハジュンは「犯罪都市」のマンネ刑事だったり、説明不要のラミランが今作でもアジュナイス、校長先生はキムホンパ(最後泣かせてくるよ)、味な役で出会い頻度高いイチャンフン、ナビレラの長男チョンヘギョンが教務部長で、ヴィンチェンツォのクムガメンバーイハンナ、意地悪だけど有能な部長先生に「犯罪都市」や「群盗」のパクジファンなどなど、キャリアが寝ない人が固めているので会話の安定感がすごいです。
韓ドラキャストってベテランの安定感が半端ないですよね。
主演を殺さず、自分もちゃんと力を発揮する真のプロたちで頼もしいことこの上なし。(敬称略)
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