ブタブタ

リプリーのブタブタのレビュー・感想・評価

リプリー(2024年製作のドラマ)
4.0
イタリア警察の無能さは世界共通認識なのか?
特にあのローマのラビー二警部補の無能っぷりは凄い。
ならば『アマルフィ』(笑)のボールワトモダチ警部はアレでよかったのかも知れない。
『太陽がいっぱい』でお馴染み、其れを始まりとするパトリシア・ハイスミスの天才犯罪者リプリー・シリーズを原作準拠でドラマ化。
河出文庫の新装版には「その怪物性はレクター博士を凌駕する」とコピーがつけられてたけど、恐らくこの《天才犯罪者リプリー》というキャラクターをちゃんと映像化したのは初めての作品では。
リプリーの天才性とは一種の《センス》みたいな生まれついての才能、やる事は行き当たりばったりのその場の《ノリ》みたいな物で生まれつきの嘘つき。
相手が望む事を喋り、自分の都合のいい事を喋り、当然生まれる矛盾はまた適当な嘘で誤魔化す。
其れが何故か全部上手くいってしまう。
トム・リプリーって「働いたら負け」の究極形みたいな「詐欺」でしか金を得る事を考えないある種の「職人」みたいな感じも。

アラン・ドロン主演『太陽がいっぱい』が超有名ながら原作とは可也違う。
このNetflix版は第一作『才能あるリプリー氏』に第二作『贋作』の導入部も少し加えてあと殺した筈のディッキーがやって来る幻想のシーンとかは最終作『死者と踊るリプリー』も入ってる感じ。

ディッキーを殺して化けたリプリーのせいでディッキーは生きているという痕跡や記録が残され其のせいで周りがアンジャッシュのスレ違いコントみたいな間抜けな事態に突入する。
其れをリプリーは意識せずに「そうなってしまう」のが凄い。
死んだディッキーを生きた人間として追う恋人マージ(ダコタ・ファニング)と警部補は当然いつまで経っても真実にたどり着かない、之って東野圭吾の『容疑者Xの献身』の元ネタかもと思ったり。

モノクロの硬質な映像はひたすら美しくて、ローマ、ベネチア、近過去のヨーロッパは異空間みたいでそこをのなりくらりと彷徨いながら全てを煙に巻くリプリーという掴み所のない男の異様さ。

好評なら続編ある?みたいなので是非続きの『贋作』それとリプリー・シリーズで一番面白いと思う『アメリカの友人』をアンドリュー・スコットのリプリーで見たい。

それからフレディ役の人、スティングの娘で女優さんなんだけど何故女性が男役に???
女性にしか見えないし実は女だったとかドラマ版オリジナル展開とかないし最後まで???だったんですけど。
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