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渇水のkassyのレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
3.5
完成披露試写会にて
登壇者:生田斗真、門脇麦、磯村勇斗、尾野真千子、山﨑七海、柚穂、白石和彌、高橋正弥監督(敬称略)

水不足で節水を求められるさなか、水道局に勤める主人公は支払滞納する家庭に赴き、水道の供給を止めていく。そんな中で母が帰らず姉妹だけの家と出会う。規則通り水道を止めるのだが…

もともと脚本自体は長年あり、その噂を聞いた白石和彌監督がプロデュースして映画化にこぎつけた。

もともと原作が90年代に書かれたもので、確かに90年代には節水が多く呼びかけられていたなと古い記憶が呼び起こされて懐かしい気持ちになった。今はここまで厳しい節水制限はないように思う。
映画自体も16mmフィルムで撮られて90年代を感じさせる作りになっているが、設定は現代に置き換えられており、古い物語の中にスマホやマッチングアプリなどが出てくる不思議な融合を感じる作品である。

主役は水道局員の生田斗真であるが、真の主役は姉妹2人であろう。帰ってこない母を待ち、お金も水道も電気もない中で2人で懸命に暮らしていく。
子供達のシーンは台本は渡さずにその場で教えて撮るスタイルだそう。これは是枝監督と同じだが、切迫感や子供達のリアルさは是枝監督に一日の長があった。

自分の家庭がうまく行っておらず、仕事も淡々とやっていく主人公だが、弱者への優しさはきちんとあるので、うまく行っていない部分と齟齬があるようにやや感じてしまった。

文字通り水を求める渇水のお話だが、本当に渇いていたのは心だったのだと最後の姿を見て感じさせる。

シビアな部分もある作品だが、そこまでシビアになりすぎていないのがやや中途半端な感じがしてしまったが、絶望の中に希望を感じ取れる作品だった。

あの、ま、普通に児童相談所には行ってほしい。


余談:水不足の本作だが、撮影中はほぼ雨だったらしい。全く感じさせないが確かに言われてみると青空のシーンは少ないかも(笑)
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