くるしい
『勝手に忘れられちゃ困るんだよ。
こっちは忘れられないのに。』
認知症になった母と息子の話。
時に、親の老化に対して怒りを感じることがある。自分はまだ子どものままの心を抱えたまま満たされず生きているのに勝手に年老いて、親として子を愛することを完全に辞め、守られる側に回る自然の原理に。勝手に弱ってそして私にしたことまでも忘れる。親の姿を放棄するな。と
自らを作り出し、育て、愛され、そして一生抱えることになる傷を負わせた人に、存在自体も忘れられてしまうというこの悲しさ、苦しさ、そして息苦しさをどこにぶつければ良いのだろう。
いつか自分もなるかもしれない「親」という立場。
それって一体何なのだろう。
子を愛さない親はいないというが。
親を愛さない子はいないという方が正しい。
だから、くるしい。
あの頃にしがみつきたいけれど、
私たちはまた未来に向かって
受け入れなければならない。