向日葵

52ヘルツのクジラたちの向日葵のレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
5.0
この作品をきっかけに、本が大好きになりました。「誰にも聴こえない声で声を押し殺して泣いたことのある人へ」そんな帯のタイトルを見たときの感覚を今でも覚えています。

52Hzのクジラは鳴く音がほかのクジラたちよりも少しだけ高い。だからいくら鳴いてもいつまでもあの広い海で仲間と出会うことはない、ずっと1人の孤独のクジラ。

(初めは親に)自分の声が誰にも届かない、そんな時いつしか人は自分自身も自分の声を無視しようとする。大きな気持ちで泣いているのに、もう誰にも届かない。溢れる感情すらも死んでしまうような。

そんな孤独さを表現した物語。
繊細で難しい、でも暖かい。

誰かにわかって欲しいとか、
そういう事じゃなくて、

私が私であることを許して欲しい。
そして愛して欲しい。
ごめんなさい。そんなことを思ってしまって、でも愛されたかったんです。

泣きじゃくりたいどうしようもない声も押し殺す。悲しさをうたい、存在を否定したくなる、でもいつかその悲しさは繋がりを見つけ出してくれる時がくる。ただそんな愛も拗れるとときに人を殺してしまう。残酷な現実を表現する。


家族は時に呪いとなる、
苦しかったら逃げていいんだよ。
次の人生を始めていいんだよ。



作品を見た後に、
心理学科卒の友人と2時間ほど語った。
たくさんの視点、考察、本を読んでいても分からなかった目線たち。
過半数の幸せが自分のものでは無いと気がついた時のこころの居場所、誰かと繋がることの怖さや諦め。

わたしも言われたことがある。

お前が死ねば良かった、
お前には分からない、
私がいなかったらどうするの…?

共依存から生み出す憎しみの連鎖。
でもね、ハッキリと今なら言える。
あなたは存在しているだけで良いと言ってくれる人はこの世界に必ずいる。期待しても言葉を表現させない、分かろうとしない、セカイが酷なだけ。出会える保証はないけれど、絶対にその声が聞こえる救い出してくれる人はいるから。


「あなたはあなたのままでいい。」


ひとりじゃない。私にはその声聞こえるよ。

蓋した傷付いた心たち
自分の絶望にも優しく触れる。

出会えて良かった、
町田そのこさんありがとう。
こういう作品が増えて欲しい、
という想いも込めて☆5
向日葵

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