けーな

生きる LIVINGのけーなのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
5.0
近年、こんなに心を鷲づかみにされた映画があっただろうか。とても感動したし、今の私の好みに、とても合っていて、ツボだった。

あまりに好き過ぎて、劇場に、2回、観に行った。もっと繰り返し観たいなぁと思うくらい。DVDも、買わなくては。

昔、今作のオリジナルである黒澤明版「生きる」を観た時にも、とても衝撃を受けたけれども、重苦しい雰囲気が強く、好きには、なれなかった。一方、今作は、同じ内容でも、明るい未来を見据えた展開で、とても希望を感じさせてくれる、優しさを感じる映画だった。

なんと言っても、主役のビル・ナイが見事。紳士になりきっている姿にシビレた。最初の登場場面で、帽子のツバに手をかけて挨拶する、その紳士な仕草に、胸がキュンとなった。お爺さんなのに、実にかっこいい("お爺さんなのに"って言い方は、不適切かな)。とにかく、ビル・ナイ演じるウィリアムズの所作や、話す言葉、全てが美しかった。

話す言葉が美しかったというのは、やはり、脚本を書いたカズオ・イシグロの手腕だろう。イギリス英語好きな私にとっては、美しい言い回しの数々に、これまたシビれた。

ビル・ナイ以外の役者さん達も、お見事だったと思う。派手なキャラクターは、出てこないのだけれど、地味な普通の人々でも、それぞれ個性があって、そのさり気ない雰囲気を、役者さん達は、実に巧く演じていたと思う。

音楽も、素晴らしかった。特に、ピアノの旋律が美しいと思う場面が、何度かあった。ビル・ナイが歩くシーンに合わせて、音楽が鳴り始め、広がって行くところが素敵だった。ビル・ナイが歌うところも、もちろん良かった。

映像の映し方も、私の好みだった。階段を上から撮ったシーンなど、絵になるシーンも、多々あって、目を奪われた。光と影を効果的に使っていたとも思う。

この映画では、主人公のウィリアムズが、どうやって生きて行くかということを教えてくれた。私も、見習いたいと思う。

ロンドンに行ったら、フォートナム&メイソンで、ランチしたいな。
けーな

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