麩菓子

生きる LIVINGの麩菓子のレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.0
240129
WOWOW 録画
オリジナルよりこちらの方が好きだった。少し前にオリジナルの方を観て、志村喬氏の演技があまりに繊細で強烈でいたたまれなかった。しんどかった。原作のしんどい部分を優しくスタイリッシュに改変してくれたのがこの作品だと思った。
ウィリアムズが”紳士”であるがゆえ変に感傷的でない虚無感が心地よく、マーガレット等々人との関わり方が自然でむしろ原作を超えた印象。
白黒映画風の作り方や光と影の切り取り方、静の扱い方が貴賓に溢れていた。俳優陣の演技が素晴らしかったのも作品の魅力をグッと引き立てる。主演ビルエイミー、ご婦人達が好きでした。
警察官が航海を吐露するシーン、あの無垢な涙が見ている側にも共有された罪悪感を優しく洗い流してくれる。
ビルの歌が上手くて凄いな〜と思っちゃった。息子夫婦の関わり方も丁度よく、葬儀のシーンも無駄がなく、切なく。全体を通して新人君視点だったのが観客と合っていて良かったのかも。不必要に観客を主人公目線に持ってこなくて。

一番印象的なシーンは、ウィリアムズがマーガレットに余命わずかであることを告げるシーン。あのマーガレット(エイミー・ルーウッド)の溜めと揺らぎの表情。そして話が終わった途端溢れ出す大粒の涙一筋。すごくすごく心が揺らいだ。びっくりした。ものすごい女優さん。

た私が日本人で、「昔の日本」という歴史的イメージへの解像度が高い・複雑だからこそ変に感情を揺さぶられやすいというのはあるのかもしれない。今作は異国の紳士の物語であって、私の日常とはかなり遠いから。まぁそこを踏まえての作品ではあるのだろうけどこの作品は翻案として美しいものであったと思った。