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ザ・ロストシティのumisodachiのレビュー・感想・評価

ザ・ロストシティ(2022年製作の映画)
3.9


プロデューサーにも名を連ねるサンドラ・ブロック主演のエンタメ冒険ムービー。

ロマンティック冒険小説でヒットを飛ばすロレッタは、考古学者の夫を亡くして暗い日々を送っていた。新作の宣伝のためシリーズの表紙モデルをつとめるアランと一緒にイベントに登壇することになったものの、ロレッタはアランがキラい。イベントは大失敗し、ロレッタは会場から逃げてしまう……が、アランの目の前で拉致されて大富豪フェアファックスの元へ!どう見てもヤバい感じのフェアファックスは伝説の古代都市を探すには彼女の力が必要だと信じていて、拒否するロレッタを眠らせて南の島へ。アランは消えたロレッタを探して南の島へと向かうが……。

あー、笑った笑った。最高に楽しくて明るくて優しいポップコーンムービー。なんといってもアランを演じるチャニング・テイタムが最高で、終わったときには誰もが彼を愛してしまっているだろう。

知的で慎重で年配で美形の主人公を女性に、アホで向こう見ずで若くてルックスだけのバディを男性に、とハッキリと(従来の冒険映画から)性別を置き換えているのがポイント。アランはすぐにパニックになり、頑張っても裏目に出てばかりで役に立たず、何かを提案しようとしてもなかなか聞いてももらえない。で、無駄に裸になるサービスシーンもある。すごくわかりやすく反転させている。とはいえ、チャニング・テイタムってもう40代だからハリウッド映画にありがちな「主人公に対して不自然に若いヒロイン」と比較できるかは微妙なのだが、ここを現実離れしていない年齢差に抑えていることが重要だったんだな、というのもわかる。

そして、アランが助けを求める謎の男にブラッド・ピット。「ハンサムでセクシーで万能で野性味もある」というカリカチュアライズされたキャラクターを演じている。対ブラピで見るとロレッタは「非力で無力なヒロイン」、対アランで見ると「有能で行動力があるヒロイン」になるわけだが、その構造を見事に利用した展開にブラボー。

ダニエル・ラドクリフは「こういうキャラだろうな」と予想した通りの芝居で特に驚きはない。まあ、ああなるわな。フェアファックスの役どころのみ従来の冒険映画からの反転といった仕掛けがなかったこともあり、ちょっと凡庸に見えてしまった感。その代わり、手下たちの描き方にはやや捻りが感じられた。

よくある映画の構造から男女を反転させ、ジェンダーにまつわる会話までさせてバカバカしい爆笑冒険譚を描いているわけだが、伝わってくるのは「表面的なイメージで判断してはいけない」「しっかり会話をしてわかりあうことが大切」など、偏見を克服して本質を見定めることの重要性。あと、チャニング・テイタムの魅力(まだ言う)

チャニング・テイタムにしてもブラピにしても、自分のキャラクターに今まで求められてきたものを客観的に判断し、これから自分たちが果たしていくべき役割を受け入れて積極的に体現しているのは凄いと思う。しかも、そういう映画をかつてアランの立場を演じていたサンドラ・ブロックが製作しているわけで。大人として尊敬できる。

あー、それにしても笑ったなー。基本的にずっと笑ってた。展開もスピーディで飽きないし、とってもお勧め!












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